白尾山から硫黄沢右股滑降 【藪径・雪径】
5月上旬に鳩待峠で吹雪になり10cm程度の新雪が積もった。そこでシールを張って白尾山まで登り、硫黄沢右股に滑り込んでみた。上部は5月にしては快適な滑降だった。下部の少雪に泣かされた。
● 鳩待峠~白尾山
鳩待峠から中ノ原三角点まで、広く緩いツガの尾根をスキーを履いてシールで二時間少々登った。なぜか蛇行しながら登っている登山者の足跡を無視して、なるべく直線的に登った。雪はよく締まっていたので、歩いた方が速かったかも知れない。新潟側から吹雪が吹付け、群馬側はよく晴れた冬型気象の日で、稜線上の天候は目まぐるしく変わった。尾瀬ヶ原は一面の雪で、至仏、燧、平が雲間に見え隠れしていた。
平頂の中ノ原三角点付近は、雪中から大方溶けた樹氷のようなツガやシラビソの上部が多数突き出ていて、そこでシールを外した。と言ってもあるかなしかの傾斜のため、アヤメ平へと漕ぎながら進んだ。一面の雪原をスケーティングで進むと、吹きさらしで積雪が少ないのかアヤメ平の標柱が露出しており、そこに晴れを待つ一人の男性がおいでになった。富士見下から登ってきたという。ここからは斜度が多少あるため何とか滑れるようになり、雪で潰れかけた富士見小屋の前に出た。数年もすれば完全に倒壊するのではと思えた。
白尾山へと再びシールを張った。ひと登りした2002mの山頂には、思いの外素晴らしい展望が待っていた。西から北にかけ、武尊があって、至仏から大白沢山・景鶴山の一帯が原の向こうに盛り上がり、奥には雲に隠れた平ガ岳の一部、燧が一段と高かった。一面の雪から頭を出す針葉樹の間を適当に縫って、南から東に廻ると皇海・白根・根名草から南会津へと低く続く山並みと、まだ白いままの尾瀬沼の一部までが一望できた。最高の展望台なのに積雪のない夏の展望は樹海状態になってダメらしく、残雪期が超お勧めだ。
⌚ฺ 鳩待峠-(1時間30分)-中ノ原三角点-(15分)-アヤメ平-(20分)-富士見小屋-(1時間5分)-白尾山 [2022.5.3] (休憩・シール等着脱を除く)
● 白尾山~富士見下
滑降ルートは雪や斜面の状態で決めようと、様子を見ながら下り始めた。初め緩い稜線を西に滑り、地形図で大きめの湿地記号がある1950m圏で南側の硫黄沢右股に快適な斜面があるので下り始めた。斜度といい隙間の空いた木立の具合といい、またもともと草付らしい快適な斜面が多数有り、まるで整備されたゲレンデと思うような信じられないくらい快適な滑降を楽しんだ。新雪は10cm程度で群馬側の陽光でベタッとしてはいたが、この季節としては貴重である。
標高で300m近く降った1670mの硫黄沢右股右岸斜面で、急に灌木と笹の露出が増加し、沢音が聞こえてきた。これはまずい。ヤブや水流に阻まれ、富士見峠からの車道に出られなくなる恐れが出てきた。富士見下付近は雪が消えていると思われ、それまでに車道に出ておかないといけない。幾多の支尾根と支沢をわずかの傾斜で回り込み、ひたすらトラバースしながら滑って、1560m付近で何とか硫黄沢左股(冬路沢)に辿り着いた。勢いよく流れる水音が聞こえた。観念して覗き込むと薄いスノーブリッジがまだ残っていた。所詮小流なので落ちたらそれまでと、刺激を与えぬよう静かなカニ歩きで辛うじて渡ることが出来た。ほぼ平らな地形を歩くように進み、1540m付近で車道下らしい地形に到達した。やや上の1560m付近を走る車道までスキーを担いで上がり、田代原を渡る平坦な車道をとぼとぼと漕ぎ進んだ。ようやく原が終わって滑り出したのも束の間、1470mで雪が消えた。そこから20分強歩くと富士見下のゲートがあった。重いスキー用具をデポしてスニーカーに履き替え、強い日照りのもと、戸倉までの5kmを空身で歩いた。スキーを車で回収に来る方針は大正解だった。
⌚ฺ 白尾山-(15分)-硫黄沢右股へ滑降開始-(20分)-トラバース開始-(40分)-車道下-(5分)-車道-(15分)-雪消え-(20分)-富士見下-(55分)-戸倉 [2022.5.3](休憩・シール/スキー用具着脱を除く)