滝川右岸道 【廃径】
40年ほど前までは川又から釣橋小屋まで歩かれていた道だが、今は寸断され、久度ノ沢~見黒沢と高平吊橋から金山沢までが辛うじて使われている。
●川又(八間橋)~久度ノ沢出合
滝川軌道跡は始め車道になっており、川又の八間橋で入川を左岸に渡り、東京発電の川又発電所の建屋を見下ろすあたりのスギ植林地まで延びていた。車道終点付近で雁坂往還を右上に分け、軌道跡は国道140号の巨大な入川橋の橋脚に呑み込まれて消えていた。踏跡が橋脚下を巧みに通過して伸び、国道を支持するコンクリート擁壁に沿ってゴミの中を進んだ。道端に電柱、上に国道脇のプレハブ小屋が見える辺りから、軌道跡が明らかになってきた。ここに国道からの踏跡が下りて来ていた。暗い植林中の道は、依然として道路から落ちてきたらしきゴミが多かった。小崩壊を難なく越え、路盤の痛んだ軌道跡をなおも進んだ。当時の枕木や石垣の残骸が頻繁に見られた。
山側に廃屋のプレハブと潰れ小屋が数軒かたまった付近から、ようやく歩きやすくなった。すぐ久度ノ沢への明瞭な下降路が現れた。雑然とした雰囲気なのでやや分かり難かった。約30M先に国道140号の久度ノ沢下降点の駐車スペースへ上がる道が分かれ、釣人への注意喚起掲示があるので、それにより気づくかも知れない。
ここからが滝川右岸道である。小刻みな電光型で下り、程なく久度ノ沢出合に立った。河原は広く、両岸の間に奇妙な吊橋、いや吊ブランコのようなものが架かっていた。両岸に渡した一本のワイヤーの下に、吊橋の踏み板のようなものが下がっていて、踏板は両岸の地面には接地していない。踏板に登るための折り畳んだステップがあったが開き難く、固定されていたのかもしれない。面倒なので腕力で踏板に攀じ登り、一本ワイヤーでバランスを取りつつ対岸に渡った。当然のごとく右岸でも飛び降りたが、後でよく見ると実際使えるのか分からないが、右岸の方は頼りない網梯子のようなものが下がっていた。一定の身長と腕力がないと渡れない、中々ワイルドな設備であった。恐らく接地させずプラプラさせておいた方が洪水に耐え長持ちするからなのであろう。
⌚ฺ 川又(八間橋)-(15分)-久度ノ沢出合 [2015.12.7]
● [逆行区間]唐松尾北尾根(バラトヤ新道分岐)~槇ノ沢
作業踏跡が交錯する植林界の50・49林班界尾根を、左の大崩壊の窪に沿って下る。1160M圏の尾根分岐で左に行く植林界尾根を見送り、右のヒノキ植林の緩い尾根を下る。この辺り、まるで奥武蔵の手入れの悪い植林を歩いているような雰囲気だ。
植林地下端の1120M圏で前方が自然林になると、尾根は急に傾斜を増し、露岩が点在するようになり、このまま下れるのかちょっと不安になる。この地点で、尾根を離れて槇ノ沢作業小屋へと向きを変える。良く探せば、植林地を真南にトラバース気味に下る踏跡が見つかるはずだ。
程なく礫崩積帯を斜めに下るようになり、ここで踏跡が分からなくなってしまう。一時道を失いそのまま直線的に斜めに下降を続けたが、すり鉢の底状地形に入って平坦な崩積帯となり、その先で再度道型を発見した。1分も進むと、プレハブの槇ノ沢作業小屋に出る。本屋のほか、トイレ、風呂、物置などがあり、あたりに生活用品が散乱している。本屋の状態は悪くなく、扉はなく内部はやや傾いて荒れているが、しっかりした床があり、ビバークになら十分利用できそうだ。
小屋周辺は植林地中のちょっとした明るい切り開きになっていて道がはっきりしないので、窪状地形を下っていくと、小さな流れが現れ、右岸に踏跡が復活する。
下ること数分で、広い河原の槇ノ沢に出る。窪は、緩い懸谷状で槇ノ沢に出合っている。放置された2本のドラム缶が、良い目印になる。
少雨が続き、槇ノ沢の水量は非常に少なく、飛び石どころか、どこでも好きな場所を歩いて渡れる状態だ。
⌚ฺ 唐松尾北尾根(バラトヤ新道分岐)-(25分)-槇ノ沢 [2013.5.26]
● 見黒沢左岸尾根~高平分岐
左岸尾根を登り始めると、割れた酒ビンの破片を見た。すぐ小尾根が急な岩壁になり右に巻くようになった。道型は消えており、踏跡はあるかなしかの弱い痕跡ほどしかない。枯葉の弱い踏まれた部分を辛うじて判別し、追いかけた。痕跡は一定ペースで緩く登り、見黒沢へと下った分を取り戻した。枯葉に崩礫が加わりもはや道筋すら不明になったので、とにかく見当をつけ一定ペースで登った。
地形図に出ない微小尾根を連続して回り込んだ。尾根上の狭い範囲にだけはモミやツガの針葉樹が優先するので、落葉がなく明瞭な道型が現れた。露岩帯の基部を抜け、小崩壊を高巻いた。踏跡があるので難しくはなかった。またもや落葉の堆積と礫崩壊で道が不明になったので、適当に水平に進んだ。1264独標から西に出る小窪は落葉の堆積が酷く伏流化しており、ヒザまでの落葉のラッセルで通過した。左岸の露岩帯に登り気味に取り付き、抜けるとやはり落葉と礫とで道が不明、そのまま次の露岩帯にかかった。点在する小尾根上の露岩帯を上へ下へと様々な痕跡が通過しており、正道が全くわからなかった。傾斜があり気を許せない一帯が終わると、また繰り返して落葉と礫の不明な一帯であった。そしてまた小尾根の露岩帯に少し登り気味に取り掛かったが、ここも踏跡が分散し判断がつかなかった。
この小尾根の向こうに回ると、危険が終わり待望の緩斜面が現れた。1264独標から西に出る尾根上の緩やかなツガの森であった。依然として多数の痕跡程度の踏跡が水平についており、もはや一筋の道の体を成していなかった。古い地形図を信用しただ水平に進むと、赤テープのマーキングと水平踏跡が現れた。ヒルメシ尾根方面への作業道であった。赤テープに導かれて多少歩かれた感のある水平踏跡をそのまま百数十メートルも行けば、幾度となく通った滝川右岸道の高平下降点であった。
⌚ฺ 見黒沢左岸尾根-(55分)-高平分岐 [2015.12.7]
● 高平分岐~曲沢
水平道は道型が薄く地形的な特徴が少ないため、帰路では水平道から吊橋への下り口は分かり難く、見落とす可能性がある。訪問日の時点では、水平道の下流方面に、白いポリ塩化ビニルの梱包テープが進入せぬよう張られていたが、いつまであるものか分からない。
自然林を、多少上下しながらも概ね水平に進むと、微流の舟小屋沢を渡る。植林に入り、すぐに沢小屋沢となる。水汲みには十分な程度の水流がある。
いったん自然林になり、歩道流失部があるが、踏まれた靴跡で渡る。すぐまた植林となり、右下に八丁坂への薄い踏跡を分ける。ただし、だいぶ前から滝川の吊橋渡れない状態らしい。
しばらく、植林内の良道が続く。12林班い8小班の看板付近から尾根を下るのは、滝川の曲沢出合への踏跡だ。この先、山側だけが自然林になり、道流失、崩壊が散発している。いずれも踏まれた足型で通過する。安全ロープが張られた箇所もある。
道の両側が植林になると、曲沢の1060M圏渡沢点だ。釣客用の秩父漁協看板が目に付くが、それに向かう明瞭な踏跡を辿ると、沢で終わってしまう。この部分、歩道は微かな踏跡程度になっており、しばらく上流へ回り込んで沢を渡っている。渡沢点でうっかり真っ直ぐ進むと、そのまま曲沢上流の植林地へ向かう道になるので注意。
⌚ฺ 高平分岐-(35分)-曲沢 [2013.5.17]
● 曲沢~金山沢先の崩壊した窪状
自然林の歩きやすい水平道をしばらく進むと、モミ谷だ。水流は多めで、緑に囲まれた雰囲気のいい沢だが、すぐ上にあった廃小屋のゴミが酷く散乱し残念だ。
すぐに安全ロープのある崩壊を渡る。ロープはなくてもいい程度だ。続いて、歩道脇の街路樹のようなヒノキ植林が続くようになる。本当に1本ずつ道沿いに植えてあり、面白い。そのせいか、道が良く歩きやすい。そのうち大きなヒノキ植林地になり、1204Mからくる緩い尾根を回る。演習林最奥の植林地で、道がある程度手入れされているのはここまでだ。
緩い尾根から4分で、やや大き目の崩壊に当たる。マーキングに従い、不安定な斜面を微かな踏跡で下巻きする。小崩壊や道の流失が続くが、釣師のものであろうか、丁寧にテープのマーキングが付けてあり、ルートを探さなくて良いので助かる。逆に言えば、テープがなくなるとルート探索で時間を食うだろう。
左岸の釣橋小屋道と同じような雰囲気の地形に、釣橋小屋道より悪くかつ不明瞭な道が続いている。
岩稜を水平に通過する部分に出るが、マーキングに従いルートを守っていれば問題ない。ただし一歩分だけ、リーチが長くかつホールドが悪い、勇気がいるスタンスがあるが、親切なお助けロープが下がっており怖くない。
この岩場を過ぎると、ワイヤーやゴミが残置された賑やかな小尾根を乗越す。尾根を登る踏跡は、金山沢の奥の作業小屋に向かうものだろうか(未確認)。
尾根の向こうに出ると、道は明らかに下り始め、右下に金山沢の水流が見える頃、大きな岩稜に行く手をさえぎられ、踏跡は消えてしまう。
急斜面を沢に向かって適当に下れ、とのことらしい。落葉に覆われたのっぺりした斜面では、明瞭な踏跡が残らないのであろう。しつこい位についていたマーキングが消えたのも不思議だったが、良く見ると下の方に同じテープがついている。
駆け下ること1分で、金山沢1090M圏の水面に立つ。やはり秩父漁協の看板があり、小屋跡の台地、過剰なまでのマーキング、何のためか沢を横断するように張った紐など、大層賑やかな場所だ。
浅瀬で金山沢を容易に渡ると、対岸にやや見難いが、白いポリ塩化ビニル梱包テープのマーキングが付いている。河岸で消えている踏跡も、テープを追うとすぐ明瞭になり、20~30メートル直上してから、左岸下流をトラバース気味に登る。
渡河点の数十メートル下流の沢の屈曲部に落ちる小尾根を回ると直ちに崩壊があり、足型を踏んで通過する。崩壊を水平に進む新道を分岐し登り始める旧道は、崩壊に飲まれて失われている。国土地理院地形図は崖記号に隠れて付近の地形が分からないが、数値地図では、1300M圏廃小屋付近から右岸道金山沢渡河点の僅か下流の屈曲部へ微小な小尾根が湾曲しながら伸びており、その左に微かな窪状地形が見て取れる。この崩壊した窪状を挟んで左岸にも微小尾根があり、旧道はそれに付いて登っていたと思われる。
⌚ฺ 曲沢-(25分)-金山沢・曲沢中間尾根-(25分)-金山沢-(5分)-崩壊した窪状 [2013.5.17]
● [逆行区間]八百尾根~金山沢先の崩壊した窪状
この区間の右岸道、すなわち旧道は断片的にしか利用されてないらしく、不明瞭かつ道型が薄い。
まず、八百尾根の北面を、ほぼ水平にトラバースする。道型は極めて薄い。途中、尾根左斜面を絡む八百尾根道の一つの踏跡が交差するが、確り踏まれたこちらに引き込まれぬよう注意する。
自然林の疎林を下り気味にトラバースするようになり、やがて1300M圏廃小屋から落ちてくる小窪にぶつかると、その微小な左岸尾根に絡んで、折り返して下っていく。左岸尾根に出会う地点は、登りの場合、1300M圏廃小屋へ向かって小窪を詰める踏跡との分岐点になっており、迷いやすい。
小窪左岸の微小尾根の踏跡はかなり薄いが、時々古いマーキングが付いている。しかし、その小窪は下部で崩壊しており、崩壊上端の1200M付近で、踏跡はかなり不明瞭になる。道の痕跡はあるが殆ど歩かれていない雰囲気になり、ついに道型は完全に消えてしまった。右手の小窪は崩壊し、渡るにも神経を使う状態だ。
細いながらも続いていた踏跡が唐突に消えたという事実から、旧道は崩壊に飲み込まれ、通行者がいなくなったものと推測された。付近を捜索したが、安定した踏跡は見られず、稀にいる旧道通行者は、崩壊による流失部を各自適当なルートで登っているものと思われた。この付近の斜面は急ではあるが、道がなくともどこでも登ることが出来る。
崩壊窪左岸の斜面を適当に数分下れば、水平に行く新道に出る。さらに右手に1~2分も行けば新道の崩壊窪通過点だ。
⌚ฺ 八百尾根-(10分)-崩壊した窪状 [2013.5.26]
● [逆行区間]槇ノ沢~八百尾根
槇ノ沢作業小屋から左岸に出合う小窪の、ちょうど対岸に位置する尾根を登る。取り付きは尾根の右(上流)側のザレて歩き難い斜面だ。そのザレ地を登る踏跡は、折り返して尾根筋に取り付いている。早めに尾根に取り付いた方が、登りやすいかもしれない。
道の状態は良く、尾根筋と右斜面とを絡みながら、ジグザグに登っていく。古い赤テープの目印が小まめに打たれている。何回も交差する古い電線は、恐らく槇ノ沢作業小屋への簡易送電線だろう。大木の切株が点在する、緑鮮やかな二次林が続く。
1170M圏で、道は突然左にトラバースを始める。ほどなく、八百尾根から谷まで続く、大崩壊の窪に遭遇する。最近でも若干の通行者があるようで、ある程度踏まれているが、慎重に通過する。
その後、八百尾根の南面を一定の斜度で直線的に斜上するうち、尾根が目前に迫る。道はそのまま尾根に乗りそうな感じだが、先を見ると大規模な倒木が行く手をふさいでいる。そして右上に踏跡が分かれており、どうも迂回踏跡のようだ。
迂回踏跡は、右岸道の一段上、八百尾根直下の一直線に伸びた切り開きに出る。直径3cmはあろうかという極太の残置ワイヤーを巻きつけた枯木があるので、ケーブルクレーン跡ではなかろうか。
その位置からすぐ、尾根南面をトラバースする踏跡が見つかるのでそれを辿ると、結局、先の大倒木の先の地点で、本来の右岸道に復帰した。
右岸道は尾根筋に乗らず、その直下をトラバースしながらどんどん進む。そして、尾根筋の1290M圏台地上地形の作業場跡を避けるように、その台地直下の1280M圏、右岸道と八百尾根道との十字路で八百尾根に出た。
⌚ฺ 槇ノ沢-(35分)-八百尾根 [2013.5.26]
● [逆行区間]唐松尾北尾根(バラトヤ新道分岐)~槇ノ沢
作業踏跡が交錯する植林界の50・49林班界尾根を、左の大崩壊の窪に沿って下る。1160M圏の尾根分岐で左に行く植林界尾根を見送り、右のヒノキ植林の緩い尾根を下る。この辺り、まるで奥武蔵の手入れの悪い植林を歩いているような雰囲気だ。
植林地下端の1120M圏で前方が自然林になると、尾根は急に傾斜を増し、露岩が点在するようになり、このまま下れるのかちょっと不安になる。この地点で、尾根を離れて槇ノ沢作業小屋へと向きを変える。良く探せば、植林地を真南にトラバース気味に下る踏跡が見つかるはずだ。
程なく礫崩積帯を斜めに下るようになり、ここで踏跡が分からなくなってしまう。一時道を失いそのまま直線的に斜めに下降を続けたが、すり鉢の底状地形に入って平坦な崩積帯となり、その先で再度道型を発見した。1分も進むと、プレハブの槇ノ沢作業小屋に出る。本屋のほか、トイレ、風呂、物置などがあり、あたりに生活用品が散乱している。本屋の状態は悪くなく、扉はなく内部はやや傾いて荒れているが、しっかりした床があり、ビバークになら十分利用できそうだ。
小屋周辺は植林地中のちょっとした明るい切り開きになっていて道がはっきりしないので、窪状地形を下っていくと、小さな流れが現れ、右岸に踏跡が復活する。
下ること数分で、広い河原の槇ノ沢に出る。窪は、緩い懸谷状で槇ノ沢に出合っている。放置された2本のドラム缶が、良い目印になる。
少雨が続き、槇ノ沢の水量は非常に少なく、飛び石どころか、どこでも好きな場所を歩いて渡れる状態だ。
⌚ฺ 唐松尾北尾根(バラトヤ新道分岐)-(25分)-槇ノ沢 [2013.5.26]
【林道途中へのアクセスルート】(確認済みのもの)
- 高平から高平吊橋を渡り右岸へ渡る巡視道
- 滝川本流をドブの白岩で渡り八百尾根に取り付く道