小室川左岸道 【仕事径】

 小室川左岸に沿って大黒茂林道に接続する水源巡視道である。過去の資料に当たったがほとんど記述が見られず、昔から数多く執筆されている小室川遡行ガイドでは、大黒茂林道を経て丹波、小菅、または泉水小屋へ抜けるように書かれているのは驚きだ。無知・無関心というのは恐ろしいものである。昭和50年に鈴野が「谷沿いに吊橋を渡って小道が続いており」と道の存在自体には触れているが、平成24年の松浦のガイド[2]が確認できた最初のものである。松浦が訪れた平成21年には通行可能であった、24年に筆者が見たときには大崩壊で不通になっていた。現時点で改修されたかどうかは不明である。

● 小室向~大黒茂林道

 車道(泉水横手山林道)の小室向標柱から水源巡視道に入る。トラバース気味に1分下り小尾根を越えるところが新旧歩道の分岐だ。道の流れは、古い水道局看板のある小尾根右を下る旧道だが、小尾根左を下る踏跡のような新道に入る。旧道は、橋崩落による泉水谷の渡渉、崩壊地の通過などで荒廃がひどく、一方新道はすぐに良い道になる。(踏査時は、旧道でいったん進んだ後、新道との合流点で新道に気づき、確認のためいったん新道を分岐まで戻っている。)
 九十九折に高度を上げ、60/65林班界標から小室川の左岸の良道を進む。
 緩く下り、崩壊地に出る。一つ目は流され掛けた桟橋を伝い、崩土上をトラバースし、馴れた人なら難なく通過できる。二つ目の崩壊は、永久に修復不能と思えるほど山が深く抉れている。一つ目の崩壊通過直後に、上から巻く微かな踏跡があったのでそれを追い、50メートル上から崩壊上端を通過する。歩道に戻った地点には谷側の木に白テープが巻かれ、また数十メートル上流側に歩道を塞ぐような大きい落石があり、目印になる。踏査日時点では巻きの踏跡は薄く、自己判断で悪場を高巻くレベルの能力が必要だ。
 左岸を行く歩道は、20m位の傾斜のある滝を掛けて注ぐ左岸支沢に行く手を阻まれる。その直前を折り返して登り、桟橋を伝って滝上で渡り、さらに支沢の右岸を登る。都合50メートルほど高度を稼ぐと、再び小室川左岸を巻き始める。すぐに、60/61林班界標がある。
 水流を高く離れてトラバースする道は、いくつかの左岸支沢を渡る。渡沢時の岩場は、石積みや桟橋の整備・補修が行き届いており、不安はない。
 緩く下って、大きな左岸支沢の中沢の1130M圏二俣付近に下りる。沢幅は広く河原で踏跡が消えるが、ピンクテープを目印に対岸の歩道を見つけるのは、難しくない。二俣のわずか下流に右岸から支沢が入っており、変則的な三俣にも見える。道は、その右岸支沢に続いている。合流点には、ドラム缶、酒瓶、機械類、ワイヤー等の古い大量ゴミが散乱する整地があり、かつて造林小屋があったと想像される。
 歩道は支沢左岸を折り返しながら登り、右岸に渡りさらに登る。この歩道で初めてのまとまった登りなので、きつく感じる。
 トラバース気味に登ると、大菩薩北面林道の合流点だ。Y字型の三路で目印はないが、ノーメダワ方向から来た場合は、急に道が二手に分かれるので見つけやすい。今回は時間があったので、新緑の美しい北面林道を、小室川渡渉点まで辿り、さらに小室川本谷や松葉小屋沢を下見した。

 

⌚ฺ  小室向-(1時間25分)-大黒茂林道 [2012.5.12]

【林道途中へのアクセスルート】(確認済みのもの)

  • 車道(孫惣谷林道、採掘事務所付近)

 

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泉水谷を渡る新道の橋
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旧道の吊橋は通行不能
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最初の崩壊は通過できる
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次の大崩壊は大高巻き
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60/61林班界付近で横切る小沢
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中沢

 

[1]鈴野藤夫『関東南部の渓流』つり人社、昭和五十年、「丹波川」五六~六二頁。
[2]松浦隆康『バリエーションハイキング』新ハイキング社、平成二十四年、二五五~二五八頁。