赤沢林道 【廃径】
下半分は軌道跡がよい歩道になり歩きやすい。上半分の林道は跡型もなく消滅し、林道歩きというよりは簡単な遡行といった感じだ。
● 赤沢軌道跡始点~モミ谷出合
川又から柳小屋への登山道を辿り、赤沢の吊橋を渡ってひと登りで道が水平になる。かつて吊修羅が設置されていた地点で、ここが赤沢軌道の始点である。水平な軌道跡を約350M進んだ道標で、左に登る柳小屋への道を分けた。行く先の赤沢林道は、山道と表示されていた。軌道跡の林道は現在も歩道として東大演習林の維持管理に使用されているので最低限の補修がされており、相当数の枕木が残され、撤去されたはずの線路も一部で残っていた。左のヒノキ植林を見ながら、入川軌道同様に見事に岩を削って造成された路盤を進んだ。左岸から出合う赤城沢の先で崩壊を渡った。しっかりと踏跡がつき、最低限の倒木処理がされているので問題はなかった。自然林の大木の緑を潜るように下る谷は狭く急になり、巨岩が転がる豪快な光景になった。軌道跡は崩れた土砂で細道となり、長い崩壊地で完全に消滅してしまった。新たに付けられた山道は、崩壊を下巻きし川原に降りて通過した。
白泰沢出合は樹下の落葉が覆う広々した河原となっており、軌道近くにはロープなどの資材が散乱していた。ここから暫く谷は再び高低差のない穏やかな平流となり、直線的な流れと河原の単調な景色の中の古い枕木を踏んでの歩行が続いた。しかし自然林に囲まれ、河原にはシオジ、カツラなどが点在し、野鳥のさえずりが響く心地よい環境に、退屈することはなかった。両岸がヒノキ植林になるころ、大量の瓶、トタン、ゴムホース、さらに水瓶のような土器、バケツ、土管など賑やかな場所があった。演習林の黄プラ杭や古い植栽表示板があり、建物の土台の石垣があった。ここが赤沢第二小屋の跡だろう。地形図にある左岸の大崩壊を見ると、軌道終点のモミ谷出合であった。幾つかの軌道設備が放置されていた。赤テープの巡視道の弱い踏跡がモミ谷沿いに伸びていた。赤沢右岸を登って行く踏跡は、埼玉県森林図にあるモミ谷奥への道だろうか。
⌚ฺ 赤沢軌道跡始点-(35分)-モミ谷出合 [2015.6.5]
● モミ谷出合~四里観音小屋
赤沢沿いの道を探したが、数十年の時の経過がすっかり洗い流してしまったようだった。もはや遡行と変わらない河原歩きを始めた。伏流の河原の、あるかないか程度の断続的な踏跡を行った。小流が復活し、殆ど傾斜のない広い河原の歩き難いゴーロを進んだ。中州の微かな踏跡を行くと、小さな林地にナンバーテープが打たれた木やプラ黄杭が見られた。左岸に再び崩壊を見ると、1170M圏で右岸からヤケゴヤ沢を合わせた。谷が狭まり、山腹の小さな踏跡を行く様になった。1M程の取るに足りない小滝やナメ滝が続く、赤沢では珍しい一帯だが、通行には全く支障ない。2M滝を過ぎると、数分で穏やかな渓相に戻った。
1250M圏で右岸支沢を、1290M圏で三里観音からの涸窪を左岸から合わせ、ゆったりとした山深い谷が続いた。1340M圏の大山からくる沢の真中にカツラの大木がある二股は、一見するとどちらが本流か迷う感じだった。谷はようやく多少沢らしくなり、小滝が現れるようになった。3M滝を右の水線からへつって抜けると、迷う場所でも難所でもない谷の途中に、マーキング的な謎の銀テープが下がっていた。遡行なら難なく直登できる4M滝を、どちらも巻けそうだが左岸から巻いた。1390M圏で右岸から支沢が出合った。細い3段3MCSを抜け、8Mは右を巻いた。登山靴では嫌な巻きだったが、登ってみると二滝まとめて左岸を高巻く踏跡があった。踏跡は、巻きの部分や河原の土が見える部分で時々見える程度で、大部分は流失しており、ないと思っていた方がよい状態だった。
1430Mで左岸から涸窪を合わせた。緩やかな河原の歩きが延々と続き、沢水は涸れそうでどこまでも涸れなかった。2条3Mを容易に通り過ぎ、鋭角のV字で中央にカツラの大木がある1470M圏の二股となった。本流の判断に迷ったが、支流の左股は水が殆どないことで分かった。シオジ、カツラ、サワグルミの原生林を登るうち、徐々に源流の様相が見え始め、伏流となった。右から二本連続で小さな涸窪を合わせ、きれいなV字の1570M圏二股となり、全く本流の区別がつかなかった。湿性の低い草、苔に覆われて緑になった石を辺り一帯に配置した、雰囲気のいい場所だった。国有林図では源流で入る水のある支沢はすべて右岸となっていたので、僅かに大きそうな右に入った。
この二股でまた水流が現れ、なおも行くと1590M圏の複雑な沢の分流を迎えた。極度に彦生えしたカツラの大木が合流点に幾つも立っていた。地形判断が難しく、とにかく一番右を取ることにした。ほぼ伏流に近いが、時々石の間から水が見えていた。また水が現れ、8Mの緩いナメは脇から容易に抜けた。谷が狭まりさらにナメ小滝が連続するが、すべて容易に通過できた。突然行く手を遮るような岩盤に突き当たり、10M2条の直瀑が立ちはだかっていた。少し下ってから右巻きがベストに見えたが、せっかく滝下まで来たので左巻きを取った。左岸は岩壁が続いており、滝下まで来てしまうと左を巻くしかなかった。20~30Mも高巻いてから下ると、1690M圏二股の少し上だった。左は涸沢だったので、右の小流に入った。細い流れは靴を濡らさず真中から登ることができた。ふと見ると幾つかの錆びた空缶が水の中に落ちていた(1760M付近)。ここから小屋への僅かな区間、良い踏跡が通じていた。
⌚ฺ モミ谷出合-(2時間10分)-四里観音小屋 [2015.6.5]