雑魚川中沢(吉沢)
遡行というより、裏岩菅・烏帽子への登路の一つ。森林をうねる清流の美しさが見所。ただし短距離とはいえ詰めのネマガリダケのヤブは苦しい。沢の名称は「吉沢」で、地形図の「中沢」は誤記らしいが、まだ確認が取れていない。
● 車道中沢横断点~中ノ岳付近2190M圏
付近は笹の海になっていたので、適当なアプローチとなる作業道を探したが見つからず、結局車道近くの1550M付近で、わらじを履くことになった。後で分かったことだが、お勧めの入渓点はもう少し上流側、1630M圏の遊歩道の木橋である。その木橋へは、奥志賀高原スキー場ゴンドラ前の橋で雑魚川を右岸に渡り、立派な車道を進んで中沢を渡る約300M手前で左に分かれる遊歩道に入り、この遊歩道を僅か20Mほど先で右へと登る遊歩道を行くと良い。歩道に入って十数分で1630M圏の木橋に達するはずである。
中沢遡行図(クリックで拡大) |
水量は少なめで、マイナスイオンたっぷりの森の中を行く穏やかな渓相だ。2m以上の滝もなく、平凡な流れを20分近く進むと、ようやく遊歩道の立派な木橋が横切った。車道に平行していると思っていたが、意外と上流側だった。
橋を過ぎると、ちらほら滝が登場する。3m以上の滝を遡行図に書き込んでいるが、この沢はそれに該当する滝は少なく、基本的に1~2mの滝が小刻みに連続している。あえて核心部と言うとすれば、木橋から1680mの左岸支沢までが、それに当たるのだろうか。
また滝が低いのに妙に釜が発達していて、滝の登挙より釜のへつりの方がメインイベントとなるポイントが圧倒的に多い。へつりも特に難しくはなく、流されるほどの水量はないので、落ちても危険は全くない。
1Mナメ+2Mナメに始まり、釜を持つナメもしくは傾斜の緩い滝が連続する。それぞれ釜+2M滝、釜+3Mの緩い滝を難なく越える。
谷が狭まりミニゴルジュに入ってすぐの、4段10M滝は4段目の大き目の釜は右から巻き、以後も1~2Mの小滝、ナメ、釜が連続し、美しい天然の水路を遡上する。
合計7~8M位のトイ状とナメの合体滝を過ぎ、時おり釜が混じる陽光が眩しいナメ床を楽しく進む。続いて、絵のように美しいナメ床を手前に持つ7Mナメを登る。このあたりまでが、ハイライトだろう。
左岸に小さな崩壊が現れた。深い森を行く中流域では珍しく谷全体に日差しが入り明るい。その先で左岸から、10:1の支沢がナメ滝を掛けながら合わさっている(1680M)。遡行開始後、初めての合流だ。
1~2Mの釜を持つ散発的な滝が続くと、谷がやや広がり、1:1の1735M二股を迎える。右は直接裏岩菅山頂へと詰め上がるが、左は北の肩で登山道に出る。標高差から考えてヤブ漕ぎの少なそうな左股を選んだ。
この辺から、遡行を妨げるかのように、水流の上に木の枝が張り、また倒木が流れをふさぐ部分が多くなってくる。周囲はダケカンバと笹が目立ち始め、早くも源流の様相を帯びてくる。一時的に笹の間の狭い流れになり、どうなることかと思うが、笹が切れると深い森の中の穏やかな流れに戻る。
水量が減り単調な遡行の中、時々現れる釜は、まだ約1Mの深さはありそうだ。平らな岩の上から勢い良く水が飛び出る2MのミニCS滝が現れたりもして、楽しい。
1830Mの2:1の二股は、水量の多い左股を取る。すっかり水流は細くなっているが、それでもまだ、奥多摩の小さな沢くらいの流れはある。1920Mの10:1の支沢を左岸から入れ、続いてすぐ右岸からほとんど水のない支沢を入れる。
ここまで来ると木がだんだん疎らになってきて、日差しが入り谷全体が明るい感じだ。1960Mで左岸から涸窪が入ってくる。流れは全くなく、崩壊跡らしい火山性の大き目の石の領域が、山頂に向かって直線的に続いている。一見魅力的で、ヤブもなく最短距離で高度を稼げるのは良いが、水流のある沢と違って崩壊上端の先は猛烈なヤブになっている恐れがある。ここは我慢して、地道に水流を追っていく。
すぐに1180Mの20:1の変則的な二股になる。谷の形的には本流とも見える右股は水が極小で、流量の大部分は右岸からスダレ状5M滝を掛けて流れ込む左股から来ている。半信半疑で滝を登ってみる。水量が少ないとはいえシャワークライムになり、この盛夏に水は雪解け水のように冷たい。たまらず右から巻いて上に出ると、先には何事もなかったかのように流れが続いていた。
いよいよ流れは高山植物の中を流れるようになり、傾斜もきつくグイグイ登るようになる。糸状6M滝は極小の水量で、水の染み出す岩を登っている感じだ。覆いかぶさるネマガリダケ下のトンネルを這うように進む水流を、同じく這うような姿勢で追っていくと、1:1の2070M二股だ。もう水流が少な過ぎ、右も左も関係ない感じだが、少しでも稜線の低い位置に出るであろう左股に入った。
数分で水が涸れたが、雨水の流れた跡がネマガリダケの下にまだ続いているので、ほとんど四足のような低い姿勢で、しつこく追っていく。ついにその水流跡もヤブに消えた。あとは稜線まで、体力勝負のヤブ漕ぎだ。ここで、踏ん張りの利く登山靴に履き替える。
ネマガリダケがやや少なそうに見える、登ってきた窪の左岸に上がり、点在するヤブが弱くオアシスのようなシラビソの根元を繋ぎながら、上に進む。注意深く観察すれば、時々シラビソの群落があるので、それに潜り込めればラッキーだ。
周辺に高いところがなくなり、幅の広い尾根上に出たようだ。ネマガリダケは相変わらずだが、元気を出して直線的に進んでいくと、大きく刈払われた登山道に飛び出した。2190Mの肩状地点のようだ。