峨乱 【藪径・雪径】

 ガラン谷に迫り出した三角点峰で、そのまま点名を取って峨乱と通称される。本来、直下まで良い道があり僅かの藪漕ぎで山頂に達するが、これは久しぶりにヤブを漕ぎたくなり、敢えてバリエーションルートを取ったときの記録である。しかも諸般の事情で渋峠からのアプローチとなった。一番効率的な道は、白根山湯釜南東の標高1989m地点で国道292号から分かれる芳ヶ平歩道を通り、芳ヶ平から前橋街道を呉服平まで進み、草津町水源管理歩道で達するコースだ。全線概ね整備が良く歩きやすい。白根~芳ヶ平は草津町が遊歩道としては閉鎖中としているが、2024.6.16現在このルート上には火山による規制もなく、バリエーションクラスの登山者なら余裕で通行できるはずだ。もしくは渋峠から芳ヶ平へハイキングコースを下り、上記に合流しても良い。また「等高線の狭間から」主催者氏が報告されたように、正直に熊倉から旧草津営林署の林道と草津町水源管理歩道を繋いで登り上げることもできる。

●渋峠~ダマシ平~呉服平

 渋峠から呉服平へ向かって、中世には入山道が通っていたとされる。現在は高い笹ヤブに覆われ痕跡すら認められない。そこで宮手沢を下るか迷ったが、付近のヤブの手強さが未知数のためダマシ平までハイキングコースを利用し、そこから前橋街道までヤブを漕ぎ下り、前橋街道を使って呉服平に回り込む予定とした。一帯はチシマザサ(俗にネマガリダケと呼ばれるもの)とチマキザサ(クマザサと似て混同され、個人的にはクマザサと思っても支障ないと思う)が混生していて、ヤブを漕ぐまさにその部分がどちらであるかにより所要時間が全然違ってくる訳だ。

 ダマシ平の標柱から取り敢えず北東方向にヤブに突っ込んだ。背丈を超すか超さないかの深ヤブだが、幸いチマキザサだったので押し倒せば何とか前進できる。しかも雪田が消えた直後でまだ倒れたままの部分があると、進みやすい。ダマシ平というくらいの真っ平だが、国土地理院の数値モデルから作成した自作の1/2500地形図(等高線間隔1m)を見れば、小窪の位置まで把握できる。バリエーションである以上GPSを使わないことにしていて現在位置を知ることはできないが、ある程度地形特徴が明確である限り問題ない。長笹沢・水池沢中間尾根を等高かやや下り気味に回り、最初の小窪を北東に下る計画にしていたが、予想通り容易にそれを捉え、僅かに雪が残る水のない窪を下った。平常は干上がっているが、豪雨や湧水時に抉れていくらしく、大石がゴロゴロして歩き難かった。道のように歩きやすい部分になり笹のトンネルになりと目まぐるしく変わったが、ダマシ平から50分で前橋街道に抜けた。近道のつもりだったが、結局大回りする芳ヶ平経由とほとんど同じ時間を費やした。

 前橋街道は一般に廃道とされるが、草津町が水源管理道として利用している部分はしっかり刈払いされ歩きやすい。これを左へ十数分も行けば呉服平である。1962独標付近の平らな部分全般の名称だが、ここでは仮に前橋街道と草津町歩道の分岐点(標高1875m)をそう呼んでいる。

 

⌚ฺ  渋峠-(25分)-ダマシ平-(50分)-前橋街道-(15分)-呉服平 [2024.6.12]

●呉服平~峨乱乗越~峨乱

 草津町歩道に入り東に緩く尾根を下った。ほとんど平坦な地に高さ2、3mはあろうかという笹原が広がるも、仮払いはしっかりしていた。ただ大木の倒木が多数あり、その度にアスレチックよろしくあの手この手で乗り越え、くぐり抜けた。いったん下りが強くなるところで眺めが開けたがまた平らになり、再度下ると左が広い敷地になっていた。ヘリによる資材の荷降場のようだ。その直後、右手に一面の笹に草津方面の展望が開け、熊倉からの歩道を合わせた。道は二重山稜状になった尾根を左に降ろうとしていた。このあと歩道は崖のような、いや実際ほとんど崖と言えそうな箇所を導水管沿いに下るようになっている。峨乱へは二重山稜左側の尾根を越える部分(仮に峨乱乗越と呼ぶ)から、歩道を外れて尾根を尚も進めば良い。

 峨乱乗越から再びヤブ漕ぎである。2mほどのチマキザサのヤブを直射日光を浴びて進むのは、暑苦しく息苦しかったが、三角点位置が不詳のためきっちり尾根をたどって登った。峨乱は等高の双耳峰で、南峰には三角点が見つからなった。深ヤブのため見つけられなかったのかもしれないが、取り敢えず北峰に向かってみた。北峰ではやはり三角点を見つけられなかったが、立木の高い位置に「峨乱」のプレートを見た。前述の「等高線の狭間から」主催者氏は、確かにここに三角点があると写真付きで紹介しているので、場所は間違いないようだ。ガラン谷の眺めが良い。

 帰りに分かったことだが、三角点が北峰にあるとなると、峨乱乗越から北峰山頂をやや通り過ぎるくらいの位置まで比較的ヤブの薄めの部分を等高にトラバースし、山頂の北尾根に達したら、同様にヤブの薄い北尾根を南に登って山頂に出れば楽だったようだ。

 

⌚ฺ  呉服平- (20分)-峨乱乗越- (15分)-峨乱 [2024.6.12]

 

 

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正面の笹原に突入する
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チマキザサの大海を水平に泳ぐ
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1つ目の小窪を下降
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呉服平の分岐
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草津町歩道も歩きやすい
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大倒木が多く都度何とか通過する
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導水資材を見る
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笹原が落ち込んで開けてくる
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峨乱乗越
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薄ヤブを上手く繋げると楽
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峨乱のプレートと横手山
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ガラン谷を一望