細久保本線【仕事径】

 登山者の間で俗に細久保林道本線と呼ばれていた、古い作業道がある。経路が地図に明示されたことは無く、どの作業道のうちどれをさすものかが定かでないが、「細久保谷ホンセンの林道はこの尾根(熊取尾根)を登って来て、1400M付近で三叉路となり、西して大クビレに達する。」[1]、「(北側から三叉路に到達して)右に入り鬱蒼とした原生林の道を行く。クマトリ尾根を越えて、大平山の下を巻いていくと、大平山・七跳山の鞍部大クビレに着く。」[2]などの記述から、車道建設で消滅した下部を除けば、熊取尾根の北側を絡むように1400Mまで上がり、大平山稜への道を右に分けて左に巻き始め、大クビレに達している道のことを指すようだ。

● 大クビレ~熊取尾根の途中(1150M付近)

 大クビレの車道脇広場は、熊取尾根およびチガオノ尾根から切り出した間伐材の土場になっていて、重機と木材とで所狭しと行った状態だ。、大平山方面には、尾根の登山道、南斜面を登る林道(間伐用作業道)、南斜面を巻く旧細久保林道本線と、3本の道が密集している。
 自然林を緩く下りながら巻いて進む雰囲気のいい道で、良道とは言えないがそこそこ踏まれている。熊取尾根の伐採が進んでいるためだろうか、新しいマーキングがついていた。大平山の南尾根を回るところで、ヒノキ植林の上端を通過し、崩壊が進む次の窪はトラロープが設置されているが、それに頼るほど酷くもない。
 水流のある窪を渡ると、熊取尾根直下の草付に出る。行きにこの歩道に出てきたのは、この地点だ。陽当たりが良く、県境稜線の展望も良い休み場だ。ここを最後に、暗いヒノキ植林帯となる。道は安定し、熊取尾根の南を絡んでどんどん下る。1306M独標で尾根筋に乗り、同時に真新しい間伐用林道が現れる。
 1230Mの尾根の突端で一時径は曖昧になっていたが、必ず続きがあるはずだ。植林の尾根筋を適当に下ると、すぐ左右に横切る踏跡が現れた。左は尾根に絡んで植林を登り林道終点付近に出ているが、工事のためかその付近がかなり弱くなり、ちょっと見ると道が途切れているように見えていた。下り方向は右で、尾根南側の自然林をジグザグを交えたトラバース気味に下った。やがて尾根を左に乗越し、植林を斜めに下り、熊取沢が近づくとそれがジグザグ下りに変わった。

 

⌚ฺ  大クビレ-(25分)-1306独標-(10分)-熊取尾根の途中 [2015.7.11]

● [逆行区間]車道(熊取林道)終点~熊取尾根の途中(1150M付近)

 支線林道終点には数台の車が止まっており、上から重機の音がする。窪の右岸は皆伐され、倒木や伐採木が窪を埋めている。間伐作業のため、この付近の荒廃が気になるが、ともかく出発した。終点から良い歩道が窪の右岸の立派なヒノキ植林を進み、やがてジグザグに登って熊取尾根に絡んで電光型に登り、熊取尾根に近い1150M付近に達した。

 

⌚ฺ  車道終点-(10分)-熊取尾根の途中 [2014.12.10]
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大クビレから細久保本線を下る
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トラロープ箇所はさほど困難ではない
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草付地点の旧細久保林道本線
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熊取尾根南面の自然林を行く道
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熊取尾根の下部ではほぼ植林中の道となる

 

[1]大石眞人「浦山谷をめぐる山々(下)」(『山』一八三号、七四~七六頁)、昭和二十六年。
[2]山と渓谷社編『東京附近沢歩き 登山地図帖』山と渓谷社、昭和三十一年、植村三郎「フキアゲ沢」五五~五七頁。