後山林道旧道 【廃径】

 両端の三条ノ湯~竿裏峠分岐、後山~親川が一般登山道である。竿裏峠分岐~アセモ沢も現役の水源巡視道なのでさほど困難ではない。アセモ沢~後山は整備が悪く、特にアサガオ窪・南山坂沢中間尾根~後山には廃道化して通行困難な部分がある。

● [逆行区間]アサガオ窪・南山坂沢中間尾根~三条ノ湯

 暫くは植林地の荒れた斜面を水平にトラバースする踏跡が続いた。道型は明瞭だが、倒木や小崩壊が散発していた。緩く下って、アセモ沢右岸支沢の崩壊地帯に突入した。最大の崩壊部は水平通過は、石の露出のため滑落のリスクが大きいと見て、下の土の斜面を駆け抜けた。崩壊部の通過は以前、地面が凍結した南山坂沢、スンナワ沢の通過に苦労したが、今回はステップが利くので大きな不安はなかった。十分な自信がなければ、通過を見合わせた方が無難だ。目印のピンクテープが多数見られたことから、改修予定があるのかも知れない。
 豪快に流れるアセモ沢をV字型に折れた木橋で渡ると植林に入り、24・25林班界標を見ると、二重滝上付近の車道から登ってきた道を右から合わせた。荷渡し用のケーブルが対岸から伸びていた。数十メートル先で、御岳沢への道を左上に分けた。耕作放棄されたワサビ田に覆われたツタクボを渡った。植林と自然林が交互に現れ、傾斜がきついため自然林部では崩壊や表土流失が多い。ただし道はよく保守されていた。地形図上では水平か緩い登りに見えるが、実際登り下りが多く意外と大変だった。モノレールを横切り、すぐ上下に通う道と交差した。車道の御岳沢出合付近から来て、ツタクボ中段歩道に連絡する道である。熊倉山に突き上げる御岳沢の支沢に26・27林班界標があり、沢はワサビ田になっていた。天平尾根の北面は、丹波山村の格好のワサビ田適地になっている。続けざまに27・28林班界標で御岳沢の本沢を渡った。この辺は傾斜が緩く穏やかな渓相である。
 自然林を尾根まで登り上げると、御岳沢左岸道が左後方から合流し、クロスして薄い踏跡となり右前方に下っていた。今来た方向を高畑・親川方面と示す、古い道標があった。尾根上の28・29林班界標の先で、青岩谷橋への道を右下に分け、植林に入った。左後方から林班界尾根を下ってきた道を合わせた。相変わらず登りは一定ペースでなく、きつくなったり平坦になったりを繰り返していた。表土流失で道型が失われつつある箇所も所々に見られた。
 丹波から竿裏峠を越えてきた道を左上から合わせると、ここからは一般登山道である。古い道標があり、来た道は作業道と表示されていた。車道完成から数十年が経ち、この古道標にすら旧林道を示す表記は認められなかった。丹波山道を合わせるとすぐ小尾根を越え、樺谷へと斜めに大きく下った。烏帽子岩や三ツ山が正面に見えてきて、後山川の奥深くまで来たことが実感された。29・30林班界標を見るとその先で権現谷(地形図カンバ谷)を渡った。谷が広くなり中ほどにシオジの株が点在する雰囲気のよい場所であった。一度登って再び下ると樺谷だった。下方の谷がみるみる近づいてくると、赤い屋根の三条小屋が見えてきた。

 

⌚ฺ  アサガオ窪・南山坂沢中間尾根-(1時間10分)-竿裏峠道分岐-(25分)-三条ノ湯後山 [2015.4.18]

●アサガオ窪・南山坂沢中間尾根~後山

 後山川右岸を水平にトラバースする後山林道旧道は、谷を渡るごとに崩壊の土砂で押し流され、本来の傾斜角である45℃の急傾斜の裸地として後山川に落ち込んでいる。全ての谷は南西に切れ込んでいるため、左岸が東向き、右岸が北向きの傾斜地になっており、この時期、左岸の通過は何とか可能だが、右岸の通過に手こずった。
 凍土の斜面はステップが効かず、崩壊地のため大きなホールドもない。まるで、45℃傾いたアスファルト舗装路を歩くようなものである。点在する立ち木と、凍って地面と一体化した浮石が、頼りないながらも唯一のホールドになる。
 最初に通過する南山坂沢は、深い切れ込みが加わり、通過可能なルートを見つけるのも大変だった。結局、数十メートル斜面を下って沢を渡り、右岸尾根を目指し微妙なホールドに頼って登り返す、困難なルートだった。次のピッチはどう進むかと、はたと立ち止まったその場所が、すでに旧道のルート上に出た地点であった─つまり旧道がまったく道として機能していない状態─という、荒廃ぶりである。通過に25分を要した。
 次に現れるスンナワ沢左岸尾根を回りこむ手前の小窪にも、手を焼いた。
 スンナワ沢左岸に入ると、尾根付近から続く植林地の最下部を通過する。ワサビ田やワサビ小屋跡の石組みがあり、川の方から右岸を登ってくる踏跡も見られる。ここは、跡形もなくなっていた南山坂沢のものと共に、保之瀬集落の耕作地であるが、かなり以前に放棄されてしまったようだ。
 スンナワ沢も、植林がなくのっぺりと凍結した北面の右岸通過に手間取り、転がり込むようにシンペイギ尾根上に抜け出た。23・-林班界標が、裏向きに倒れて落ちており、旧道は、完全に放棄されている。
 シンペイギ尾根で水源林は終わり、旧道は民有地に入る。次の渡るシンペイギ沢は、道型は流出するも前の二つの沢より通過しやすく、その後は倒木で荒廃した植林帯となる。身の安全が確保された分、天国のように思える。
 きわめて不明瞭な踏跡が断続的に続いているが、とにかく水平に進んでいく。伐採跡らしい開墾地で踏跡が消えるが、水平に行くとまた復活する。シンペイギ尾根までの巡視道に比べ、道型は頼りないが、危険がないだけ歩みがはかどる。
 釜ノ沢の先の植林中の小窪で、突然大崩壊に出くわし、唖然とする。幅二十メートル、深さ十数メートルに抉られて取り付く島がない。見る限り下流方向は大きく削られているが、上流側は傾斜が緩んでおり、どこかで渡れるかと期待できる。見れば、左岸を登る踏跡があり、迂回ルートができているらしい。
 標高差にして五十メートルも登ると、崩壊の幅は数メートルになり、踏跡がそこを渡っている。とはいえ、一度下降すると崩壊から抜け出れる確証はない。対岸のホールドを慎重に目視し、概ね上がれそうだと確信してから渡りにかかった。実際には、当日の状況では、それほど難しくはなかった。
 崩壊回避の踏跡はしばらく伐採地を水平に続いていたが、次の植林地で消えてしまい、本来の道の高度まで適当に下ると、道の続きらしい頼りない踏跡が見つかった。
 植林と自然林の混ざる単調なトラバースを続けると、忽然と石垣のようなものが見えた。廃村の後山についたらしい。家屋は失われ、垂直方向に分布する2~3軒分の石組みだけが残っている。踏跡は消え、戸惑って石組みの間を登って行くと、丹波天平へ続く登山道の道標が見つかった。道標は、旧道から見て上方の、集落最上部の敷地跡に立っていた。

 

⌚ฺ  アサガオ窪・南山坂沢中間尾根-(1時間10分)-シンペイギ尾根-(1時間)-後山 [2013.3.3]

●後山~親川

 一般登山道の区間。後山から植林作業道をトラバースすること10分で、高畑集落に入った。まだ住めそうな家もあるが、現在、廃村である。親川から高畑までは、地形図歩道は100%デタラメなので要注意だ。高畑の最後の廃屋の先で、落滝への水平道の分岐があった。折り返して高度を落とし、尾根北面をトラバース気味に下り、わずかに尾根上を通り、廃道分岐から電光型に折り返して尾根の南側を下った。トラバース気味に進み、最後に人家の裏手から親川集落に入った。

 

⌚ฺ  後山-(25分)-親川 [2013.3.3]

【林道途中へのアクセスルート】(確認済みのもの)

  • 二重滝下(アサガオ窪)の車道
  • 二重滝上(アセモ沢)の車道
  • 長尾根付近の竿裏峠道

 

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アサガオ窪近くの後山林道旧道
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アセモ沢右岸の崩壊地
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崩壊地を渡り振り返る
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V字型に折れたアセモ沢の木橋
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旧林道の道型はしっかりしている
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御岳沢の美しい渓相
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御岳沢を渡る辺りは良く保守されている
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表土流失が進む
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高畑・親川を指す旧林道時代の道標
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竿裏峠越え丹波へ道との分岐
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三条の湯
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凍土の旧道(廃道)は見た目より難しい
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シンペイギ尾根付近に残る道型
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水源林境界の23・-林班界標
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幅20メートルの大崩壊
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後山集落跡の石組
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高畑廃村のまだ住めそうな家屋