和名倉・割石平道【藪径・雪径】
和名倉山のヒルメシ尾根道の途中に合流する、自然林や原生林の美しいコースである。不動の滝入口から登って、見事な自然林と真っ二つにスパッと割れた大岩がある割石平を抜け、1350M付近の緩やかなミズナラの美林を経て、1650M付近でヒルメシ尾根道に合流する。昭和37年に、清水武甲・浅見清一郎共著の「奥秩父 山旅と風土」(山と渓谷社)で紹介されたのが、後にも先にも最後である。
下りに使った場合、慎重なルートファインディングを要するが、登りなら楽しいバリエーションコースである。
● 不動の滝入口~割石平
旧・民宿ふるさと近くにある不動の滝入口の東屋から出る遊歩道に入り、荒川の吊橋で渡り、大除不動尊で不動の滝への道を分け、尾根を数分登った675M付近の分岐が割石平への入口である。ここから左に山腹を巻いていくのが大除沢道、割石平へはそのまま尾根を直登する。神々しいほど立派なヒノキ植林の急傾斜を登ると、864独標付近に平地があり、カラマツ植林と自然林に沼のような水溜まりができていて、ちょっと風情がある。丸みのある尾根形状は、時々平坦部が入り不明瞭で、下りの場合は気配りが必要だ。森林図にある歩道は怪しいもので、当てにせず尾根筋をしっかり捉えて登った方が良い。時折、小さな自然林や傾斜の緩んだ部分を見ながら登る。
900M付近のやや傾斜が緩い部分で自然林になり、まるで御神木の様な立派なケヤキの群木がある。20m幅の石塊上に枝分かれした3本の立派なケヤキが鎮座している。だが祠や鳥居は見当たらなかった。この辺りからヒノキ植林は左にずれ、自然林を行くようになる。一段上の905M付近が割石平である。幅十数米、高さ6mほどの大岩が、包丁で真っ二つに切ったかのように見事に真ん中が幅数十センチで二つに割れている。なかなかの見ものだが、残念ながら電池切れのため写真がない。
● 割石平~1425M付近
最後のピンクテープを見ると、露岩が点在する緩やかな美しい広葉樹の森を南西に登っていく。山腹の地形は特徴がなく、微かな尾根上の膨らんだ部分を拾って登ることになる。古いガイドに「わずかな踏跡をたどって」とあるが、現在踏跡はないので、下る場合は複雑な尾根の地形を読む細心の注意が必要だ。川又へ落ちる尾根に近づいてくると、次第に傾斜が強まり、最後はその尾根まで斜面をひた登る。尾根に出ると、和名沢(鎌双沢)側はカラマツ植林になっている。この尾根には特に道らしきものはないが、植林地なので容易に登ることができる。振り返ると、眼下に栃本・川又の集落が広がっている。カラマツ植林は1330M付近の尾根が二股に分かれる地点で終わり、この後しばらく、尾根の傾斜が緩まり、和名倉山では珍しい広葉樹のプロムナードとなる。傾斜がきつくなると1425M付近を通過する。
● 1425M付近~ヒルメシ尾根1620M付近
水平距離にして約400Mほどのこの区間は、歩いたことがない。区間の下から見ても上から見ても、また地形図を眺めても、容易な尾根の踏跡歩きに見える。ただ下りの場合、踏跡の付き方次第では1605M付近の尾根が不明瞭に二分する辺りでルートの取り方が難しいだろう。
● ヒルメシ尾根1620M付近~1762独標(川又道・高平道出合)
尾根上に伐採時の作業道の残骸と思われる弱い踏跡があるので、それを辿れば良い。不明瞭にな部分もあるが、尾根歩きなので大きく外すことはないだろう。ほとんど消滅しかかっている川又道より、むしろ明瞭である。比較的緩いヤブのない尾根を登ると、雰囲気の良い原生林に入り、東大の境界見出標が付いた展望のない1669独標を通った。起伏の少ない尾根の多少東寄りを、踏跡が水平に続いた。次の緩いピーク先で川又道が目前に接近するのを川又道のマーキングテープで知るが、向こうはあくまでも山腹をトラバース、こちらは尾根を行くので交わることはなかった。比較的明瞭な踏跡は、広い尾根のやや東に絡むうち弱い二重山稜の左尾根を登るようになり、次の1742M小峰の頂で右に直角に曲がった。尾根筋にだけ残る貴重な原生林は雰囲気が良い。長細い1763Mピークを乗り越すと、また川又道のマーキングがすぐ右手に見えるが、尾根をあと一分進むと、1762独標手前の鞍部であった。ここで川又道、高平道に出合うが、すべて不明瞭なので、四辻の感は全くしなかった。