山と高原(第一期)

 「山と高原」は、朋文堂から発行された月刊誌である。発行期間は、第一期が昭和14年5月から19年4月、22年5月~25年7月(途中、第二次大戦激化による休刊)までの97巻、「山小屋」に合併されて廃刊となった(合併により「「山小屋」も「山」へ誌名変更)。この大戦中の休刊を雑誌では終刊と表現したので、昭和22年の復刊以後を第二期とすべきとの考えもあるが、号数が継続し形式も踏襲しているので、ここでは休刊と考えた。ちなみにこの合併で生じた「山」は215号(昭和29年6月)から「山と高原」に誌名変更され、341号(昭和40年5月)まで続いた。これが第二期の「山と高原」である。
 第一期の「山と高原」は、日中戦争が勃発し国家総動員法が施行される中で創刊され、敗色濃厚となるまで毎月発行され、また大戦後の登山もままならぬ混乱期に復刊され、物資不足の中三年余り続いた。従って、陸軍少将の肩書つきの投稿や、国民健康管理の立場から厚生省や東京市の役人の投稿があり、また行軍、戦時下、国民、強歩、官民一致などの言葉が散見され、紙面は自ずから戦時色が垣間見えていた。その一方、山を愛するごく普通の山男・山女の記事もあり、微妙なバランスの中で発行されていたことが分かる。
 戦時期の休刊は主要山岳誌の中で一番遅かったが、いよいよ戦局が悪化する中での政府の指示によるものであった。しかも休刊直前の60号では、約4倍に増頁してガイドブックかと言うほど多くのコースを紹介する気概を見せている。60号に掲載された「終刊のことば」を見ると、「本誌を最後に三誌(山と高原、山と渓谷、錬成旅行)統合して新たに『山とスキー』一誌を創刊」としており、新たに創設された山とスキー社が、登山・旅行関係を一手に受けることになったようだ。
 扱う内容は、東京を中心とした日帰りや一泊程度の手軽な山域が比較的多く、誌名が示す通り一般ハイカー向けの雑誌と言えよう。ただそのために、東京から誰もが手軽に行けるコースとなると、何年かのうちに記事が重複する嫌いもあった。初級者・中級者が、実用的なガイドとして利用していたのであろう。

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