土室川の歩道 【仕事径】
土室川は、葛野川ダム左岸の車道が通行止(歩行者含む)のためアプローチが悪い。通行止箇所(東京電力のダム用地)の高巻きは、地形が極めて急峻な上、ダム工事による擁壁が続き、なかなか悪い上、うんざりする幾つもの長いトンネル(延べ約900米)も通過せねばならない。従って、右岸歩道を延々と辿るか、小菅川から牛ノ寝を乗越すのが無難である。ここに述べるのは、始め右岸の作業道を辿り、上流で軌道跡の左岸歩道に移る道筋である。
● 深城~740M圏の橋
車止の置かれた国道の拓道橋を徒歩で渡り、右岸の車道を進んで、高さ105メートルの葛野川ダムの堰堤下に出る。車道から袖部の構造体の上部まで約100メートルの高巻きだ。
まず伐採地をV字型に二回折り返して登る。二回目の折り返し後の少し不明瞭な部分を直線的に斜上し、そのまま植林地に入る。植林地内で踏跡が多少ばらつくが、そのまま斜上を続けると、ダム袖部を支える前方の尾根に乗り、袖部の最上部に出る。
巨大な階段状の袖部構造体の最上段を水平に抜け、続く踏跡をなおも水平移動し、ヒル窪でダムから続く林道に降りる。ヒル窪の手前は、見た範囲では、法面のため降りられない。巻道を通じ、全般に踏跡はバラけていた。
林道は揚水用の上池からの取水施設(地形図建物記号)で終わり、廃林道らしいダム沿いの歩きやすいプロムナードに変わる。すっかり人工的に整流されたナカ窪、シラガブチ沢を過ぎると廃林道は終わり、山道の東電巡視道に変わる。入口に、通行注意の警告板がある。
歩道は小崩壊が頻発し、一般登山者に薦められる状態ではないが、ロープや桟橋で、一応の通行は可能な状態だった。次に現れる、見事に造成された菅栃沢には、廃トンネルがあった。その位置と標高とから、葛野川発電所の地下発電装置建設時のアクセス経路ではと推測される。
巡視道はいったん、廃トンネルの上を高巻くように登る。尾根上で、そのまま上に続く踏跡を分け、すぐに川沿いに戻る。
1~2分進んで、再び高巻きの登りとなる。今度は高さ数十メートルの大高きで、足場が悪いが柵とロープに掴まって急登する。植林地に入ると元の高さまで急降下する。旧道との三叉路には、路肩注意の看板があり、また残置白布と意味は分からないが12Rの標識があった。
散発する小崩壊を注意深く抜けると、モルタルコンクリ吹付護岸の上を通過する直前で、左に植林作業道を分ける。すぐにやはり改修された吉平沢を渡る。道なのか分からないが、コンクリで固めた傾斜が川に向かって下りている。その先にも崩壊があり、注意して渡る。
ようやく悪路が終わり、通行注意の看板から再び廃林道の歩きやすい道となり、コガツラ沢出合の少し下で、鉄製の橋が架かり何かの施設がある水門に出る。巡視路はここで終わっているので、上流に向かうならここから左岸の車道にあがる。
●740M圏の橋~タマナコ沢
土室川左岸の森林軌道跡を利用した車道を約700米、さらにそこから歩道となって約400M行くと、勢い良く流れるタマナコ沢を渡る。谷を横切るように、宙ぶらりんになった土室川森林軌道の橋梁と線路の残骸が渡されていた。この区間、緩流の土室川を遡ったので軌道跡は通らなかったが、恐らく問題なく通過できると思う。
●タマナコ沢~戸沢出合
軌道跡の歩道は、水源林道のような歩きやすい水平道で、土室川の左岸を高巻いている。崩壊で線路が宙に浮いたところもあったが(通過は要注意)、大部分は逆に崩れた土に埋もれ線路が見えなくなっている。
十数分歩くと、軌道跡の高さまで沢が迫ってきた。まもなく、緑深い山の中の平らに開けた場所に着いた。トロッコの車輪がひとつ置いてある。ここが軌道の終点である。左から、本流と大差ない大きさの戸沢が出合っていた。さらに左から小沢が入り三股のようにも見える。右岸の茅ノ尾を登った付近が、長峰の栄兵衛小屋跡である。