八百尾根道 【仕事径】
八百平から滝川左岸道経由で出会いの丘、または滝川右岸道経由で高平まで、約3時間(推定)で出られる。下り始めの広い尾根筋は不明瞭、1832Mで右手の尾根を取り暫くで、尾根型が明瞭になり良道となる。八百(1520M付近平坦地)を過ぎ、再度尾根が広くなったら分散する踏跡を辿り、林道跡のように見えるケーブルワイヤー跡の切り開きに移る。直線的に進んで廃小屋跡、続いてワイヤー等多量の残置物がある1290M圏平坦地の作業場跡を通過し、1200M圏尾根分岐で右の尾根を取ると、1150M圏の変則五叉路で、滝川右岸道の新道が右に分岐する。右岸道を取れば、高平まで約2時間だ。なおも尾根を下ると、右手に逸れる不明瞭な道型を電光型に下り、金山沢左岸道に突き当たる。左折してドブノ白岩の下流側で滝川を渡り(増水程度によっては渡河不能)、小尾根の踏跡で滝川左岸道まで登り返す。
● [逆行区間]ドブノ白岩~滝川林道
対岸の滝川左岸は岩壁が続いているが、尾根道を降りた地点のちょうど対岸は岩の傾斜がやや緩く、都合よく二本のバンドが斜めに走っているので、そこから簡単に岩の上の台地に登れる。
湾曲部上の台地は思いのほか平坦で広く、木々が点在する楽園のような場所だ。踏跡は尾根筋のやや右側斜面を絡むように登っていく。
途中、右に数多くの斜上トラバース踏跡を分ける。釣り人用の左岸巻道か、豆焼橋方向からの短絡路か分からないが、何も考えず踏跡に従うと、そのいずれかに引き込まれてしまう。まっすぐ尾根を登り上げると、豆焼橋の標高に対し約120Mの無駄な登高になるが、迷う恐れのない尾根踏跡をあくまでも追う。
下部では露岩が続く明瞭な小尾根を右巻きしていた踏跡は、登るに従い徐々に尾根筋が不明瞭になり、尾根を絡んで登るようになる。相変わらず踏跡が分散しているが、時折マーキングがついているので、それを拾って進む。
左から微かな尾根上地形を合わせるころには息が上がってくる。890M圏の渡河点から1160M圏の滝川左岸道合流点までの標高差約270Mの登りは、一日の行程を終えた身に応える。
鳥獣保護区看板のところで、漸く左岸道に合流する。下降の時は、鳥獣保護区看板も滝川への下降踏跡も幾つもあるため、付近の地形を正確読み、ドブノ白岩への小尾根を正しく見極める必要がある。
● [逆行区間]1150M圏滝川右岸道新道・八百尾根道交差点~ドブノ白岩
変則五叉路を成す1150M圏右岸道新道・八百尾根道交差点から、尾根道を下っていく。痩せ気味の尾根を行く道の状態は大変良く、この先に期待が持てる。
いったん右手斜面を折り返して下り、再度尾根筋に戻った1110M圏は傾斜が緩く、板切れが落ちていたり、ワイヤー等多量の残置物がある小平地があったりするので、作業基地であったらしい。
ここから尾根が傾斜を増すのと同時に、道は尾根筋を離れ、右手の金山沢側斜面を絡むように折り返して下っていく。この付近、かなりの表土流失があり、乱れた踏跡となり、倒木も多く、道型が不明瞭だ。多数の踏跡があり迷うが、とにかく金山沢に向かって北へと下っていけばよい。
金山沢左岸の三十メートル程上方、流れがはっきり分かるところまで来ると、水平踏跡に遭遇する。良く見ると左がほぼ水平、右は金山沢へと下っている。
とりあえず右へ進むと金山沢の、ちょうど釣人が釣りをしているところに出た。どうも、釣り人のアクセス路に入ってしまったらしい。釣人に来た方向を尋ねると、先の水平道のもう一方の方角をさしている。やはり、あの地点は、左の滝川側に進むべきだった。
流失気味の傾斜地を水平に進む明瞭な左岸踏跡は、少し下流に進んで安定した二次林になると良道になる。どんどん進み、八百尾根の末端を反対側に回りこんですぐ、尾根南側の窪状に降りて、その左岸を下る。この辺りは踏跡が分散している。
その窪状地形を降りて、岩壁に縁取られた滝川の渡河点にうまく下り着く。すぐ左手(上流側)の流れがカーブした地点に、ドブノ白岩の白っぽい岩壁が見えている。今日は水量が少なく、気軽に渡渉できるのでありがたい。
● 1150M圏滝川右岸道新道・八百尾根道交差点~1280M圏滝川右岸道旧道・八百尾根道交差点
変則五叉路の全ての選択肢のうち、最も水平に近い経路である、右にトラバース気味に緩く登る道を選び、さらに進んだ。
少し登った後は水平に進み、すぐに1061M独標に向かう尾根に乗る。尾根を横切り尚もトラバースするかと思えば、その先は大崩壊した窪で、全く進む余地がない。尾根筋には上下方向とも、割と良い踏跡がある。
下りも気になるが、今回は登りを選び、幾筋にも分かれた踏跡を拾いながら、すぐ八百尾根1200M圏に出た。
なお、右岸道・八百尾根交差点からこの地点までは、忠実に尾根を辿る踏跡もあり(2013.5.26確認)、どちらをとっても大差ないが、今回の経路は、大崩壊窪上部で唐松尾北尾根の素晴らしい展望が得られるので、晴れていれば行って損はない。
八百尾根道は、この付近では今もって登山道として十分使えるほど、明瞭だ。ただし道が幾筋にも分かれていて、尾根筋を追うもの、右手を行くもの、左手を行くもの、と様々だ。
緩く登ると1290M圏の肩状台地が目の前に迫ってくるが、その直前で右岸道が不自然なまでに深くいU字を描きながら、尾根道を横切る。金山沢側の旧道部分は、途中崩壊で寸断されているため微かな痕跡程度しか残っておらず、槇ノ沢側は尾根をトラバースする明瞭な踏跡が付いている。近道して台地上を乗越さず、わざとその僅か下方を酷く遠回りのトラバースで通過していることから、台地上は突っ切るのが憚られるほどの一大作業場であったことが伺われる。
作業場付近は踏跡がひどく錯綜し、重要な右岸道の交差点にも拘わらずマーキングがなく、また特に旧道方面は、諸々の踏跡に圧倒され、道型も風前の灯だ。
● 1280M圏滝川右岸道旧道・八百尾根道交差点~八百平
わずかに登ると1290M圏の肩状台地で、多数の造林ワイヤーを巻きつけた枯れ大木、落ちたワイヤーほか、広範囲に渡る廃棄物の散乱を見る。
ゴミの散乱する廃墟を進むと、すぐ1300M圏小屋跡がある。こちらは、流し台やヤカンなど生活用具も大量に捨てられており、極めつけは、小屋そのものの一部が、なぜか数十メートル離れた樹林の中に落ちている。強風で飛ばされたのだろうか。こう言うといかにも汚い場所のようだが、伐採後は落葉樹の美しい自然林が再生しており、緑豊かな尾根になっている。だからこそ逆に、残念なことにゴミの散乱が目立ってしまうとも言える。
この小屋場付近は賑やかな作業場だったと思われ、周辺は道が多すぎ、どれを進むべきかわからない。一番もっともらしそうな、尾根の右を通る良道を辿る。はっきり読めないが、「足※@△」と書かれた看板が落ちている。
南東に100メートルも行くと窪地があり、そこから林道の様に見える切り開きが、尾根筋のやや右手を真っ直ぐ尾根沿いに伸びている。
周辺を捜索すると、枯死笹ヤブの中、各方面に多数の道が網の目のように作られており、どれもそこそこ歩くことが出来る。しかし結局、林道のような切り開きが一番歩きやすそうと判断し、それを辿る。
その中に明瞭な歩道がつけられており、開発終了から40年近くたった今も、非常に歩きやすい。切り開きは、地形を無視してあくまでも直線的であり、造りが林道とは明らかに異なる。とすれば、間違いなくケーブルクレーン(いわばスキーリフトの貨物版)の跡地に違いない。
緩やかな尾根を跡地に沿って10分も進むと、若干のワイヤー等の散乱があり、ケーブルクレーンの索道跡が終わる。網の目のような踏跡に誘われ、尾根筋に出てみると、こちらも複数の踏跡がついているので、適当に選んで尾根を登っていく。
基本的に道は良いのだが、どうしても倒木、枯死笹ヤブで分かり難い部分があり、その時うっかりベストでない方の踏跡を選んでしまうと、行くには行けるが捗らない。この尾根にもしばしばワイヤーと酒瓶が落ちている。
そんな状態なので、1504.5M三角点は知らぬ間に通り過ぎ、1520M圏の尾根筋が広がった緩斜面に出る。枯死笹ヤブはなく、ブナらしき二次林が点在する素敵な場所で、八百(ハッピャク)と言う(「奥多摩」(田島勝太郎)による)。ここにも若干の造林作業廃棄物の残置がある。
少し進むと尾根筋が狭まり、1550M圏の十字路となる。一番明瞭なのは、右に逸れて八百谷作業小屋跡(1340M圏)へ向かう道で、真っ直ぐ尾根を登る道、左の金山谷の奥の作業小屋跡(1350M圏)への道も、見た感じ、歩くに差し支えない程度であった。そこで、引き続き尾根道を取り、八百平へ抜けることにした。
枯死笹ヤブの下生えの二次林をぐんぐん登る。あいからわず道は歩きやすく、下手な登山道と変わらぬほどだ。尾根が広くなると金山沢側のブナや白樺の疎林を巻き気味に登り、踏跡が不明瞭になる。
1832M肩状は、尾根が分岐する小平地で、僅かに残されたモミやマツの優先する原生林が美しい。
八百平までは、幅広の緩い原生林の尾根を登る、古きよき和名倉の面影を残す好ルートだ。苔むした倒木を乗り越えて、おぼろげな踏跡が続いている。
有力な踏跡が右にトラバースしていくので追ってみたが、すぐに白樺の二次林になってしまった。八百谷上部の伐採作業道だったようだ。
和名倉山へ続く主尾根が近づくと、薄い踏跡は八百ノ頭を左に巻き、八百平で縦走路に出る。