藤尾山周回歩道 【廃径】

 藤尾山を一周する道は、現在は細切れになって、場所により状態が全く異なる。舗装道となった部分、巡視道として整備の良い歩道の部分、廃道部分など様々だ。犬切峠~ブナ平尾根は巡視道、ブナ平尾根~笹平は廃道、笹平~椹窪は車道、椹窪~二ノ瀬~風穴沢は巡視道、風穴沢~犬切峠は車道である。

●犬切峠~大霜尾根

 犬切峠は車道が通過しており、さらに高橋へ下る歩道と旧車道、藤尾山周回林道、藤尾山登山道の4本の歩道が生じているから分かり難い。ただし高橋への2本の道は峠を出てすぐ分かれるので、峠上では3本の歩道として認識できる。藤尾山周回林道は、始め藤尾山へ続く尾根の右を巻くように登り出し、軽く登ってから水平になるものである。降雨試験施設がある1390M圏の肩状地点を通過し、とても手入れの良い水平道ですぐ33・32林班界標のある東屋に着いた。

 

⌚ฺ  犬切峠-(10分)-大霜尾根 [2015.2.28]

●大霜尾根~藤尾橋上

 大霜尾根上の33・32林班界標の大霜沢側は、鹿ネットで仕切られているため、まず紐で結んだ扉の開閉でスタートする。ネットを潜ると、すぐに東屋がある。
 植林地の水平道は、さらにほぼ立て続けに3回、鹿ネットを通過する。短区間に計4回のネットを通過することになり、うんざりする。なお、最後のネットの手前で、シンヤ沢へ下る作業道が分岐している。
 ほぼ水平な歩道は、植林と自然林がめまぐるしく入れ替わる。32・31林班界標の峠状の地点で、藤尾(高橋尾根)を回り込む。ここに、藤尾を回りこむようにシンヤ沢へ下る道の分岐がある。
 道は、僅かに下り気味に進み、茶臼沢を過ぎると、次の尾根で31・30林班界標となり、この先が若い大規模植林地になっている。道は上下に分岐するが、上は一見立派だが単なる作業道らしく、植林地内で消えてしまう。
 下の道をとると、すぐ東屋を過ぎ、さらに下から来る歩道を合わせると、植林地を抜ける。自然林に入り、大指沢を横切りなお緩く下ると、小尾根上で藤尾分岐となる。
 水平道はこの地点が標高が最も低く、両方向が登りになっており、小尾根を下って藤尾へ向かう道との三叉路になっている。

 

⌚ฺ  大霜尾根-(30分)-藤尾橋上 [2012.10.27]

●藤尾橋上~ブナ平尾根

 周回歩道は、緩く登りながら自然林を進む。藤尾から犬切峠方面の植林地を縫って進む部分に比べ、利用が少ないせいか、やや道が細く頼りない。
 藪なしで雰囲気が良く、思わず登りたくなるブナ平尾根を回り込むところに、31・37林班界標がある(3年後に訪れた時は見えなくなっていた)。すぐ先に大きな倒木があり、落葉に覆われその先の道がはっきりせず廃道化している。

 

⌚ฺ  藤尾橋上-(10分)-ブナ平尾根 [2012.10.27]

●ブナ平尾根~笹平

 風景が変わって、右手の岩岳尾根の奥に軽く雪化粧した飛龍山が見えてきた。殆ど痕跡のない自然林の斜面をともかく水平に行く。そのうち時々、僅かに踏まれた跡が見えてくるが、すぐまた消えてしまう。道があったとは信じられぬほどの何もない山肌を約20分我慢して進むと、ブナ平尾根から北東に出る尾根を回って大窪のすぐ右岸を行くところで、道型が見えてきた。ここまで全く道がなかったのに突然現れる明瞭な林道は感動的ですらあった。
 大窪は伏流化しているのか水はなく、沢筋は幾つにも分かれていた。本流らしい窪を渡るところまで、道型は続いていた。
 大窪の左岸で道型は全く消えてしまい、しかもよほど多数の桟橋を掛けない限り林道を通せないほどに、岩稜や露岩が頻繁に現れるようになった。向かう笹平が約200M下方であることを思うと、下巻きが正解だろう。道型は全くないまま、岩から逃げるように、下へ下へと回避して進むと、時々何か踏まれた痕跡が見えるときもあった。そうは言っても斜面全体に露岩が点在しているため、完全に回避出来るわけではなく、時には小岩稜を越えるときもあった。危険度・難易度の観点で、林道して成立するかどうかの勘所で判断して、推定される道筋を下った。
 標高1150Mの等高線が、大窪左岸で一箇所南に突き出ている所がある。この小尾根この山は殆どが広葉樹なのだが、この小尾根はアセビなど黒木に覆われていて、ほんの20~30Mの間道型が残っていた。これで経路が正しいことが確認された。
 数分後に微妙な崩壊が現れた。崩壊面に岩はなく擂鉢状に泥壁が谷へと落ち込んでいた。9割方渡れそうな感じだが、敢えて挑戦せず高巻いた。そのすぐ隣の窪も左岸が崩れており、対岸の黒木の尾根に道型らしいものが見えるので何とか渡ろうとした。枯葉で埋まった窪に下りるも、対岸には岩と泥の滑りやすそうな斜面が延々と続いていた。少し上なら通れそうに見えたので行って見ると、9割方行けそうだが安全に渡るには今一歩という感じだ。そうして40Mも登ってようやく窪の左岸尾根に渡った。この黒木の尾根は1373独標から南東に出る平場尾根で踏跡があり、以前藤尾山に登るのに使ったものだ。登った分を下り返し、再びトラバースに戻った。その地点はやはり通過困難な岩稜の下部を巻くとの基本方針に従えば、自ずと特定できた。その地点では微かな痕跡が、左右に通じていた。ということは、正解はやはり下巻きだったのかもしれない。
 本来の道筋らしいルートに戻ると、落葉の中の微かな痕跡と岩稜の障壁とに導かれて大きく下り、やがて斜度がやや緩くなると笹平の辺りで右下に車道が見えてきた。痕跡は完全に消えてしまい、車道の30~40M上を適当に水平移動した。車道の切り通し上で、高度を上げてきた車道に追いつかれ、旧林道は明らかに吸収されてしまっていた。法面のフェンスや石垣のため下れず、100M戻った笹平の石垣が低くなったところでようやく車道に下りた。藤尾上段林道はここで現在の車道とほぼ同じ経路を来た旧一ノ瀬林道に合流し、二ノ瀬へと向かっていた。

 

⌚ฺ  ブナ平尾根-(1時間40分)-笹平 [2015.2.28]

●笹平~二ノ瀬

 旧一ノ瀬林道は、地形的に見て現在の車道と同レベルか少し下にあったと思われ、車道建設により消滅したことは明らかだったので、椹窪まで車道を歩いて移動した。車道では全く車に出会わず、新しい轍さえなかった。椹窪の左岸を旧道は電光型に登っていた。巡視道として使用されているため、手入れも良い。道は小尾根を越えて牛首沢右岸に入り、沢沿いを登った。谷は積雪で埋まり経路判断が非常に難しかったが、約1100M二俣を右に入り、1120M圏二俣をさらに右に入ってヒノキ植林をジグザグに登った。
 牛首ノタルは植林中の風情のない場所で、乗越したら同様の植林をたまに折り返しを交えて斜めに下った。雪で埋まった郷山沢を木橋で渡った。橋がなければ道筋は全く分からぬほど積もっており、交差するらしき巡視道は、跡型もなかった。すぐ上流で一ノ瀬川は、三ノ瀬方面の中川を分ける。植林の中、一ノ瀬川右岸の平坦な雪原で、まったく方向が分からなくなった。川沿いに橋を探すと、二つの河の中州的な合流部に渡る小さな木橋が、唯一の道の痕跡として見つかった。それを渡ると程なく二ノ瀬集落内の車道に出た。右に金鶏寺、左に小学校跡を見て、何軒かの家の間を通り、犬切峠越えの古い車道に出た。この間、集落内で誰にも出会わず、人の姿を見かけなかった。

 

⌚ฺ  笹平-(10分)-椹窪-(40分)-二ノ瀬 [2015.2.28]

●二ノ瀬~犬切峠

 屈曲する一ノ瀬川の見下ろしながら左岸の車道を歩いて一ノ瀬集落に入った。車道の橋で右岸に渡り返すと、すぐ左に分かれる雪に埋もれた山道があった。道型の分だけ雪の積もりが不自然になっていたのでそれと分かった。巡視道らしく、ゴウロ窪の右岸尾根の植林中を一直線に登っていた。1280M圏で尾根が平らになり、1300M付近で尾根が再び急になる辺りで、雪に埋もれた道の気配が右へトラバースしていた。追って見たが、雪に覆われた植林の斜面ですぐに分からなくなった。なお、本来二ノ瀬からここまで郷山沢を登る巡視道を辿るべきなのだが、積雪で完全に埋まっていたため、今回はこの迂回ルートを使用した。
 辺りにチェーンソーの音が響き渡っていた。積雪・氷結で車道の通行も大変なこの時期、伐採作業が行われているのには驚いた。雪は時に凍っており、植林中のトラバースは中々怖く、岩場のように一歩ずつ移動した。余りに進まないのに業を煮やし、20Mほど登ると道があった。これを水平に辿り、風穴沢付近で車道に出た。ワゴン車が一台止まっていた。車道は日が当たって解けた後氷結し、傾いたスケートリンクのようなところがあった。犬切峠で振り返ると、雪野原の向こうに大常木、竜喰、笠取の稜線が見えた。

 

⌚ฺ  二ノ瀬 -(5分)-一ノ瀬-(30分)-風穴沢(車道出合)-(10分)-犬切峠 [2015.2.28]

【林道途中へのアクセスルート】(確認済みのもの)

  • 高橋から大霜尾根
  • 藤尾から大指沢左岸の東屋付近
  • 藤尾から藤尾橋上
  • 笹平~椹窪間の車道上
  • 二ノ瀬~一ノ瀬集落近辺

 

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日向尾根を回る辺りの巡視道
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ブナ平尾根へ向かう良い巡視道の登り
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周回歩道廃道部、道型は完全に消滅
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周回歩道廃道部(奇跡的な残存箇所①)
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周回歩道廃道部(奇跡的な残存箇所②)
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大窪右岸の200M弱のみ道型が見える
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露岩を縫って安全な場所を下る
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岩稜は基本的に下巻きで通過
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後には径の痕跡すらないが、
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同じ場所で前を見ると道が見える地点
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崩壊地は大きく高巻いた
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露岩帯下縁を微かな痕跡が下っている
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笹平に来ると下に林道が見えてくる
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椹窪の旧道入口
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郷山沢を渡る橋で道の存在が知れる
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一ノ瀬川を長い木橋で渡って二ノ瀬集落へ
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黒川に起源を持つ金鶏寺
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犬切峠へと旧い峠越の車道を辿る