岩屋林道 【廃径】

 訪問時点においては、過度の派手なマーキングが付けられていたので、熟達者にとっては容易、ただし一般ハイカーは迷いやすく無理な状況だった。マーキングが多すぎ雰囲気は好ましくなかったが、森林自体は美しく、岩屋も昔のままよく保存されていた。

● 国師岳~西沢2030M圏左岸支沢出合

 国師岳の山頂から、低いシラビソの林を真北に下り出す。道そのものは、森林の繁茂と倒木で甚だしく荒廃しているが、夥しい赤ペンキやテープのマーキングで、バリエーションコースに慣れている者なら迷うことはない。
 この時期、約30cmの残雪で道型が殆ど見えず、マーキングがなければ正しいルートを取ることは難しいが、ガスに包まれていない限り、地形で判断すればルートを誤る心配はなく、マーキング過多の感はぬぐえない。しかし物は考えようで、本来なら上級者向けの難路が、ある程度のバリエーションの心得があれば、誰でも安心して歩ける簡単なコースになっているとも言え、頭を使ったりルートを探したりする必要はなく、一般登山道に近いレベルの高速歩行ができる点、エスケープルートとして便利だ。
 国師岳直下の低木・倒木帯を縫うように抜けると、北尾根の右を絡んで下る。2470M圏から西沢に下り始める。この辺もまだ8~9割が積雪地だ。谷への特徴のない斜面も、沢山の赤ペンキのマーキングがある。立ち木の両面にマーキングがあるので登り下り両方向とも良く分かり、曲がる場所には矢印、うっかり侵入してはいけない道筋には×がついている。2350M付近で西沢の少し離れた左岸を行くようになり、続いてなだらかな小尾根を越えて岩穴窪の左岸を下っていく。この付近では、もう殆ど雪がない。いったん右岸に渡り、再度2200M圏の左岸小窪が合わさる地点で左岸に渡る。
 この地点の、左岸の大岩をくり貫いた形で、林道の名の由来となった十数名は泊まれそうな立派な岩屋がある。シェルター様のあまりにも見事な形状に驚いたが、調べると、「近年、この所に小細工して、宿泊に適するようになった。」(「奥秩父・続」原全教)とのことだ。奥秩父らしい森に囲まれた環境のよい場所で、いつか泊まってみたいものだ。
 岩屋の下ですぐ岩穴窪の右岸に渡り、平らな苔のじゅうたんを踏みしめ進む。いつしか左から再び西沢が現れ左岸を少し行くと、右岸に渡り、すぐまた左岸に戻る。谷が狭まり10mほど上を巻いた後、また川に下り、右岸に渡る。左岸に小規模だが真っ白な崩壊を見ながら、右岸の2100M付近の台地状を行く。谷が広がり踏跡は不明瞭だ。沢の屈曲点で左岸に渡り、小尾根を回り込みながら沢身の10mほど上を平行して下る。この辺り、道が行く筋にも分かれ不明瞭だ。再び川に下ると、すぐ右岸へ渡る。渡河点手前に、渡らずさらに左岸を行くよう指示する騙しの赤ペンキ矢印が木にスプレーされており、捜索に3分を浪費した。探しても道がないため、すぐ間違いと判断できた。直ちに左岸に渡り返し、一時は中州を通過し、すぐ、行きに降りてきた梓川西沢2030M圏左岸支沢出合に出る。顕著な左岸合流支沢なので見逃すことはない。ここから国師岳北尾根を超えて車道(川上牧丘林道)に近いが、道がないので、余程の熟達者以外には難しい。

 

⌚ฺ  国師岳-(45分)-岩屋-(25分)-西沢2030M圏左岸支沢出合 [2013.6.6]

● 西沢2030M圏左岸支沢出合~廃車道終点(2010M付近)

 国師ノタル分岐への下りは、執拗なマーキングがあり迷う心配はない。川幅の狭い部分を左岸高巻きで抜け、川原を少し歩いてマーキングに従い、川中にちょうど都合よく配置された石を伝って右岸に渡る。この辺り、踏跡が幾つか並走しているため、どれが正道か良くわからない。
 すぐに右岸から小窪が合わさった。この辺から下流は人手が入っていると見え、伐採跡の明るい二次林を不明瞭な踏跡で下っていく。次の右岸合流窪を通過し少し下ると、漸く分岐に出た。多数の廃棄されたビール瓶と、黒焦げのヤカンが落ちている。ここから下流側の道は明らかによくなっており、一般登山道と大差ない。国師ノタル方面も良道で、今来た道のみが不明瞭な踏跡であった。さらに数分進むと微小窪があり、そこから幅広の切り開き状地形になっている。ここが廃林道の終点である。
 この先しばらく、かつて車道だったとは思えぬほどの、ヤブと崩壊で荒廃して消滅しかかった道路跡が続いている。試しに1933独標に出合う右岸小窪まで下ってみた。車道跡を百米も進むと梓久保林道(営林署の古い巡視歩道)分岐だが、全くその形跡は認められない。車が走れそうな部分はほとんどなく、崩れて歩道分の幅しか残っていない箇所、道型が分からぬまでにヤブが繁茂し密林状になった箇所が続いた。車道上のヤブを漕ぎ分けて進む踏跡の他、両側の山腹にヤブを避ける踏跡が出来、要所にマーキングが設置されていた。流失しかかった涸窪通過部の車道下に水を通す配管の残骸で漸く人工物であることを確認し、引き返した。

 

⌚ฺ  西沢2030M圏左岸支沢出合-(20分)-廃車道終点(2010M付近) [2013.6.6]  廃車道確認部分の通行は2015.6.28

【林道途中へのアクセスルート】(確認済みのもの)

  • 国師ノタルから梓川の廃車終点付近の分岐

 

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岩屋林道の国師岳からの下り出しは、→ 
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→ 矮性のシラベと残雪・倒木の難路
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丁寧なマーキングで悪路も迷う余地なし
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赤テープが岩屋を指示
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標識シリーズ「左折せよ」
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標識シリーズ「この先通行止め」
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森の中では、安定する林道
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惚れ惚れするような原生林を行く
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見てすぐ分かる立派な岩屋
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雨でも快適だろうが風は防げない
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渡河点を強くアピールするマーキング
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岩屋林道の苔むした古い桟橋
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騙しの左折マーク(直進して渡河が正解)
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2年前の赤テープで北尾根乗越入口を確認
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梓川左岸の原生林を行く岩屋林道
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不規則なマーキングが付いた伐採跡