倉沢・横篶山道 【廃径】

 倉沢集落が廃村となったため、横篶尾根への山稼ぎ道も自然と廃道化したと思われる。鳴瀬沢までの植林地部分は辛うじて道が残っている。

●横篶山~倉沢

 水源巡視道の-/13林班界標から尾根の踏跡に入る。倉沢への旧道が尾根を離れる地点は分かりにくいが、赤テープが巻いてあった。落葉の中に、正確に追うのが難しいくらい微かな踏跡がついている。それを頼りに、複雑に波打つような斜面を下ると、別の赤テープがあった。多分正しいようだ。
 微かな形跡は消えたり現れたりしながら、巨岩の間を下っていくようなので従う。獣道かもしれないが、それにしては地形図にピッタリ合い過ぎている。
 すぐ植林帯に入り、今度は本来しっかりしていたと思しき作業道になる。しかしあいにく、間伐材や枝打ちのクズが道を覆いつくし、道の位置が判別できないほどの荒れようになっている。幸い植林帯に入ると、それまで特徴ない斜面を下っていた道は、はっきりはしないものの尾根状地形を下るようになっている。
 一時は完全な植林帯の下りであったが、そのうち尾根状の左手が植林、右手が自然林で、その境界付近を下るようになる。そして、踏跡が多少はっきりしてくると、ほどなく2本の大木の下に着く。特にモミの大木は直径1m以上の立派なものだ。
 踏跡は大木を過ぎても、尾根を真直ぐ下っていくが、地図上の旧道は尾根を離れトラバース気味に鳴瀬沢へ下っていく。高度計やら現在地が分かるGPSなどの最新機器は持ってないが、ここまで下った感触や目印になりそうな大木の存在から、この辺が沢への下降点だろうと判断し、右手の自然林に入っていく。
 始めは踏跡を失っていたが、崩壊地の下に相変わらず獣道のような細く不安定な踏跡を発見し、伏流気味(場所により水があったりなかったり)の鳴瀬沢に降り立った。両岸にはテープのマーキングがある。
 この先は植林帯で、踏跡は追いやすくなる。部分的に荒れているが、旧道はほぼ等高に着いているので分かりやすい。
 倉沢オキ尾根を回り込むと、伐採地下部の良道となる。安心したのもつかの間、八幡沢を渡る直前で、良道は林道方向へ下っていってしまう。等高に行く旧道は、また荒れた植林作業道に戻ってしまった。855M標高点から南東に派生する尾根に乗ると、多少よい踏跡になり、そのまま倉沢集落跡に入る。
 倉沢集落はかなり広い。奥多摩工業の倉沢にある採石場の社宅群があった場所で、社員が町から車で通勤するようになり廃村になったという。現存するたった一軒の家も、主が亡くなり無人になったそうだ。
 廃屋はすっかり片付けられ、集落内の道(坂なので階段が多い)と平らな敷地のみが残っている。縦に長く分布しており、かなりの規模であったと想像できる。
  集落跡が意外と大きいので、集落内で道が分からなくなる。結論的には、少なくとも3本の下山路がある。集落上部からの水平道は、倉沢見通尾根を越えて採石場の方に続いている。落ちて鉄骨だけになった橋があり、その向こうはフェンスで厳重に封鎖されている。恐らくこれが、かつて社員が出勤に使った道だろう。集落の中ほどからの水平道は、ちょうど大ヒノキの脇で尾根に出て、そのまま都道の大ヒノキ登山口まで続いている。集落の下からさらに下る道は、唯一残った家屋の脇を通り、植林地を斜めに下って倉沢林道まで続いている。

 

⌚ฺ  高平-(30分)-滝川右岸道 [2019.11.29]