和名倉・大除沢右岸尾根 【藪径・雪径】

 和名倉山の長大な二瀬尾根は、中程の1515独標から大除沢出合へ向かって北西に支尾根を派出させている。歩きやすそうに見えるこの尾根の下部(大除不動尊~1160M付近)に東大演習林の巡視道が付いているが、この道はそこから尾根を外れてトラバースし、登尾の植林地へと向かってしまう。森林管理の作業道だから仕方がない。しかし登山目的なら、この支尾根を1515独標まで真直ぐ上ることができれば、二瀬尾根への最短コースとなって都合が良い。だが地形判断が極めて難しいことは、地形図を見れば明らかであった。今回以前から気になっていたこの支尾根を登ってみたので、報告しておきたい。(ジャンル不詳のため、無理やり藪道に分類)

● 不動の滝入口の観光用東屋~1515独標北西尾根の1160M付近

 この区間は遊歩道と作業道のため、このページでの報告対象ではないので、ごく簡単に紹介しておく。荒川左岸車道の大除沢出合付近に観光施設の東屋があり、そこから不動の滝まで遊歩道が付けられている。植林地を標高差で約40M下ってつり橋で荒川を渡り、大除不動尊まで登り返す。不動の滝へ下る遊歩道を見送り、演習林の巡視道に入る。荒廃気味の巡視道は、不明瞭かつ不規則に折れ曲がり、所々で作業踏跡が分岐するので、一般の通行には適さない。簡単に記すなら、不動尊から初め尾根を登り、685M付近の植林地で大除沢の左岸のトラバースを始め、激しい崩壊で大除沢に下ろされたあと、数十M先で右岸に渡る。右岸をさらに百Mほど進んで沢沿いの道を捨て、右岸山腹に取り付く。九十九折れで高度を上げたあと、尾根に絡んで登り、860M付近で一度、これから登る1515独標北西尾根の上に立つ。以後尾根の南側を絡みつつ、高度を上げる。910M圏で尾根北側の植林地への作業道を分け、尾根が緩む1060M付近で、大除沢の浮田製材所への廃道を分ける。さらに登った1160M付近で、巡視道は突然尾根を左に離れ、トラバースを始める。
 ここまでの巡視道も確りしたものではなく、あると言われればあるという程度のものだ。道筋や地形を知らない者が、これを頼りに歩けるようなものではない。

● 1515独標北西尾根の1160M付近~1515独標

 このルートの核心部である。この先、尾根には道らしいものはなく、微かに踏まれた痕跡がある程度になった。ただし登りの場合、デタラメに登っていればいつかは目標地点に行き着くものであり、この尾根に関しては技術は不要、ただ体力と根性さえあれば良い。しかし今回は往復の予定なので、下りに備えて注意深く進んだ。
 1180M付近で立派だった尾根地形は、突如曖昧になって山腹に消え、自然と緩い谷を登るようになり、戸惑う箇所であった。ここはそのままこの谷を登っても、また左手の顕著な小尾根地形を登ってもよく、だがこの谷も小尾根も1260M付近で山腹に消えてしまった。そして右手の斜面に突如発生する微小な尾根地形に取り付いた。一種の舟形地形であり、この区間で唯一の、明らかに迷いが生じる地点であった。
 さてここから1515独標までの標高差約250Mの登りは、極めて微小な尾根が生じては消えることを幾度も繰り返す、ほとんど特徴のない斜面であった。行くべき方向が定まらないという点では大いに迷うとも言えるが、迷う余地が無いくらい地形特徴がなく、登りはとにかく高い方へ、下りは栃本集落が見える方向へと、ただ進むしかなかった。幸い訪問時は斜面の状態によって5~50cmの積雪がある部分が多く、気温高いため一歩ごとに潜り明確な足跡が付くことが多かった。ただし雪が硬い部分では足跡が付かず、雪が切れる部分にも歩いた痕跡が残らなかった。この途切れ途切れの足跡は、完全に頼りにすることはできないが、行きに登ったときの周囲の大凡の様子を記憶しておけば、十分使える道標になった。
 1450~1480M付近は斜度がきつく、雪の付いた滑りやすい斜面を木の根に掴まりながら登った。やがて急に前が開けると、樹林に囲まれた1515独標の平頂であった。帰りに下り口が分からず泣くだろうと思ったが、やはり10分近く探し回る羽目になった。積雪が少なく雪の硬い部分もあるため、山頂付近では明瞭な足跡が付きにくく、しかも距離を開けて飛び飛びに付いていたためである。

● 1515独標~1639独標

 二瀬尾根の尾根筋を厳密に辿る踏跡を歩いた区間である。雪が切れた部分では弱いながらもはっきりした踏跡があり、時々マーキングの古いテープも見られた。今回通らなかった前後の区間にも踏跡が伸びていたので、登尾ノ頭から舟ノ平まで尾根通しに付いているのではと想像される。
 常緑樹と低木やヤブの複層の森を潜るように登る道は、意外と歩みが捗った。ただ下りの場合、1560M付近の台地状、1620M付近の尾根が曲がる部分は分かりにくく、行きに残しておいた薄くまとった雪上の足跡が役に立った。1639独標も景色は悪く、道すがら森の微妙な切れ目から、浅間、苗場の白い山々を望むことができた

 

⌚ฺ  不動の滝入口東屋-(1時間20分)-1160M付近で演習林巡視道を離れる-(40分)-1515独標-(30分)-1639独標 [2018.3.3]

 

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薄く雪が付いた尾根の様子
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1515独標の平頂
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足跡を頼りに下る