二ノ瀬・シナノキノタル道 【廃径】

 二ノ瀬から竜喰谷の右岸を辿り、精錬場尾根に取り付いてモリ尾根の中程に位置するシナノキノタルに至る道がある。精錬場尾根の荒廃が酷く道も不確かだが、竜喰谷の部分は水源巡視道として整備され、モリ尾根に乗ってからも割と歩きやすい。

●二ノ瀬~竜喰谷渡沢点

 二ノ瀬集落内の、一ノ瀬川最下流に当たる地点に駐車スペースから、よく整備された道が山へと登っている。一見して、水源巡視道であることは明らかだ。
 登り始めて1分で、上へ登る道と一之瀬川左岸を進む道に分かれたので、迷わず左岸道に入る。手入れの良い道は、ほぼ同じ高度を保ちながら、僅かに下っていく。
 ミノワ谷を渡る地点の60/59林班界標が、巡視道であることを確証している。水の音は時に岩混じりの高度感のあるトラバースが続く竜喰谷出合付近で遥か下方に遠ざかるが、道が竜喰谷右岸を進むようになると再び急速に近づいてくる。この周辺はかつて竜喰金山であったと言い、痕跡が残っているのだろうが良く分からない。谷に下れそうな地点と、対岸の登れそうな尾根とを観察しながら、進んでいく。
 竜喰谷に1070M圏で右岸から出会う小沢を、巡視道が竜喰谷流域に入って初めての木橋で渡る地点では、谷は大分近づいている。この小沢を降りられるかとも思ったが、上から覗くと、滝で落ちている感じだ。だが、小沢のすぐ先の小尾根上は、落葉樹の疎林状の谷まで標高差20~30Mの土の急斜面になっていて、下降できそうだ。
 慎重に小尾根を下ると最後は大岩になり、降りやすそうな左手(上流側)から谷に下りた。目の前の左岸は一枚岩の絶壁で、水量の乏しい細い滝が落ちている。下ってきた右岸の大岩と左岸の絶壁とでゲートのようになっているが、左岸近くは浅く靴のまま通過できそうだ。岩が点在する流れが狭いところで、靴を濡らしながら左岸に渡り、20~30メートル下流に移動して、精錬場尾根と思しき尾根の下に立った。さきほど巡視道の木橋で渡った右岸の支沢が15Mの滝で出合う地点である。
 ここは、F2(二条4mの滝)の先、かつ8M幅広滝の数分手前の地点で、資料により、F3、精錬場ノ滝、弥惣(ヤソウ)小屋ノ滝など、さまざまに呼ばれている。特に、精錬場ノ滝、弥惣(ヤソウ)小屋ノ滝などの固有名詞は、報告者により指す滝が異っていた。

 

⌚ฺ  二ノ瀬-(30分)-竜喰谷渡沢点 [2011.5.8]

●竜喰谷渡沢点~シナノキノタル

 原および田島による戦前の案内図では、二之瀬から竜喰金山跡を経由して、竜喰谷を渡ってモリ尾根に上がり、シナノキノタルで大常木林道に繋がる道があったようだ。しかし道の位置、竜喰谷の滝の名称など、現在呼ばれているものとは一致せず、道の位置が特定できない。
 「モリ尾根の突端の1440米の頭から、丁度「谷」の所に急に下る小尾根は精錬場尾根と称し、シナノキタルから尾根伝いに来た小経は、この尾根に沿うて下り、竜喰谷を渡ってから急に登り、鉱坑跡を通り、一ノ瀬川に面して等高に巻き二ノ瀬へ出る。」(原・1933年)、と記述されている。原の神経質なまでに詳細な案内図によると、精錬場尾根は、一之瀬川出合から下駄小屋滝上で竜喰谷が東行から北西行に大きく屈曲する地点までの距離に対し、出合から測って4割くらいの距離で谷に落ちている。そして、最新の正確な地形図においても、ほぼ同じ地点に1434Mから来た小尾根が落ちているのである。これを精錬場尾根と考えるのがもっともらしい。
 尾根下部は土の急斜面で、潅木、落葉樹、笹などがまばらに生えている。時折小規模な露岩が混じる。常に進路と退路とを確認しながら慎重に行動すれば危険はない。数分の登りで右手の少し離れた斜面に直線的な小さな窪が見える。鉱山の精錬関係の遺稿なのか、単なる自然崩壊なのかは分からない。文献によって、竜喰谷金山は、右岸とも左岸ともされている。少なくとも精錬場尾根が左岸にあることから、左岸に何らかの関連施設があったことは想像できる。
 さらにひと登りで、今度は左手に大崩壊地が現われる。恐らく、巡視道からの下降点付近の左岸に20M位の細い滝で合流する支沢の上部だろう。
 精錬場尾根は、形状は丸く周囲の斜面より若干盛り上がった程度なので、登りは何とか尾根筋を外さず行けるだろうが、下りは迷いやすいと思われ、崩壊地や岩場が散在するので十分注意が必要だ。正面にミノワノ頭方向を望み見ながら、ほぼ一直線に、かつ少しでも盛り上がった小尾根状の場所を選んで進むのが良いだろう。裸地で植生が疎らなため、明瞭な踏跡が形成されておらず、歩いた痕跡が認られる程度だ。
 登るに従い徐々に木々が多くなり、標高1350Mあたりからは笹や潅木の間の踏跡になってくるので、道筋を失う可能性は低くなる。1410M圏の小ピーク(地形図では肩として表示)で、竜喰谷出合から尾根伝いに登ってくるらしい踏跡を合わせ、モリ尾根の突端の1434M峰に登りつく。
 1434M峰は潅木の明るい山頂で、三叉路になった道の、他の二方ははっきりしている。左がシナノキノタルに向かい、右は後日確認したところ百数十M進んだシラタキ尾根上部で消えている。
 道には要所要所に蛍光ピンクのテープが付けられており、こんな山中に確りした道があることから、水源巡視道の間道と思われる。そう推測したのは、大常木林道のような長大な巡視道にはたいてい間道が設けられており、しかもピンクテープはこの山域の巡視道に共通して用いられているマーキングであったからである。
 モリ尾根上は、シナノキノタル直前まで笹ヤブはさほど強烈ではなく、飛竜から笠取を眺めながらの楽しい尾根歩きだ。1470M圏肩では、一度左の支尾根に乗ってから再度主尾根に戻るが、岩稜で踏跡が見えにくい。道には要所要所に蛍光ピンクのテープが付けられており、こんな山中に確りした道があることから、水源巡視道の間道なのかも知れない。

 

⌚ฺ  竜喰谷渡沢点-(40分)-1434独標-(30分)-シナノキノタル [2011.5.8]

【林道途中へのアクセスルート】(確認済みのもの)

  • シナノキノタルで大常木林道に接続