前橋街道(草津峠) page 4 【廃径】

仮称)白沢小屋分岐~芳ヶ平

  分岐を発つとしっかりした仮払いのため道幅分かるようになったが、街道は牛馬道規格の一・八米の道幅で作られているようだった。小さな崩壊地で道が消えたが、特段の危険なしに渡った。やや切れ込んだ白沢の支窪を渡る急斜面で、中電歩道以外では珍しい古い石積の補強を見た。異常高温の今年ですら六月に入ったというのに僅かな残雪が見られた。明治時代の雪消えの悪さが想像される。植生が森林から笹原へと少しずつ変わり、そのため斜面の崩れが次第に増えてきた。ただし全般に緩斜面のため大崩壊はなく、崩れていても容易に通過できた。横手山から北東に出る顕著な尾根を一九〇七米で回ると、暫くは緩い下りとなった。宮手沢本流の左岸の笹の斜面は道型が流れて仮払いだけされた斜面のため歩き難かった。

 宮手沢は多少の水流がある小沢で、巨岩で沢筋が埋まっているため素直に渡ることができなかった。渡沢点に何に使うかわからぬ細ロープが下がるも、それで岩を乗り越せるでもなく、少し上流にまわって岩を越せる場所を探して渡った。逆方向から来たときは、岩の上から滑り落ちるように容易に通過できた。宮手沢右岸斜面の二つの崩壊も道型が消えていたが、通過は難しくなかった。地形図に乗らない小沢を幾つか渡ると呉服平である。一帯は緩やかな深笹の斜面でどの地点が呉服平と決まっているわけではなさそうなので、ここでは渋峠から萩輪へ下る信州古道の尾根道の分岐を呉服平としておく。信州古道は続いた一本の道としてはとうに失われているが、呉服平からの下り部分が暫くの間草津町水源歩道としてよく整備されており、峨乱三角点へはこの歩道を使うと近くまで容易に行けるので便利だ。巡視員が芳ヶ平から来ると分かりやすい位置に、この分岐を示すピンクテープが設置してあった。

 長笹沢の源頭に差し掛かると多数の小流を次々と横切った。作業用のテープやゴミが落ちている付近の直下は草津町第十水源の取水口の一つであり汚さないようにしたい。高い笹の緩斜面を広く切り開いた平坦な道にそれらの小流から入り込んだ水が溜まり、歩きにくい部分が続いた。長笹沢の左股が激しく削った笹の急斜面をトラバースしながら緩く下る辺りで、長笹沢の水道施設と左岸の萩輪平の植林地がよく望めた。四角く見えるのは資材運搬用のヘリポートらしい。地形図の一八二六独標近くで水道施設へ下る小さな作業道を分け、街道が長笹沢・水池沢中間尾根を回り込んで南に向うようになると(仮称)長笹小屋への立派な巡視路を左に分けた。南ゼン沢の左岸に入ると笹が低くなって見通しが効くようになり、芳ヶ平ヒュッテの赤屋根が目に入ってきた。芳ヶ平から大量の水が流れ込む南ゼン沢の本流を渡り右岸を軽く登ると芳ヶ平の一角である。最後の数十米は刈り払いなく一時的に酷い笹ヤブとなったが、ハイキングコースの大看板目指して進めば良い。誤侵入防止のためこの区間だけ刈り残してあるようだ。一般道に飛び出たところに先ほど見えた大看板があった。本来十字路であるべきところで、直進が芳ヶ平ヒュッテを経て草津に至る前橋街道、右が芳ヶ平湿原と渋峠、左がキャンプ場、大平湿原を経て入山である。いま来た道は道型が全く見えないため、実際は三叉路である。

 

⌚ฺ  (仮称)白沢小屋分岐-(15分)-呉服平-(45分)-芳ヶ平 [2024.5.30]

● 芳ヶ平~草津

 この区間は整備されたハイキングコースなので、簡単に概要だけを説明する。芳ヶ平のヒュッテ前を過ぎ白根山への道を分け大沢川右岸を下る。森に入ると笹が深くなるが刈払いがあるので歩くに支障はなかった。所々で旧前橋街道の古い道が並走するがヤブに覆われ歩く気はせず、試しに少し歩いたが時間がかかるばかりで無意味なので、すぐ隣の現在の道を下った。横笹で大平湿原経由の元山への道を分けると、主尾根に乗り移るため少し下って毒水沢を渡った。この下り部分は街道跡と少し離れた新ルートとなっていた。主尾根を暫く下り、大沢川の右岸支窪を大きく回り込むと大きな案内板があった。かつて大沢川の源泉から湯を引いてここで営業していた香草温泉の跡地で、ここまで車道が通じていた。廃道化して草に覆われた車道の小さなヘアピンカーブをハイキングコースの階段でショートカットして下り、二百米ほど抉れて用をなさなくなった廃林道を下った。廃林道のヘアピンカーブから街道の山道に戻り、蟻の塔渡りと呼ばれる極端なヤセ尾根を通過した。柵があるので転落の危険はない。開発されて草津温泉ゴルフ場となっている不思議なくらい平坦な谷所原の右端を進むと、ゴルフ場に続く立派な車道を横断し道はなお続いた。緑美しい谷所川へ大きく下って吊橋で渡り登り返すと地形図の一二〇一独標、もう草津温泉の一角であった。三方に出る舗装路の真ん中を取ると、温泉街の中心湯畑近くに出る。

 

⌚ฺ  芳ヶ平-(25分)-横笹-(25分)-香草温泉跡-(35分)-1201独標-(15分)-草津温泉 [2024.5.30]

● 【参考】中電歩道(草津峠~横手裏ノ沢)

 深い笹薮の草津峠から上州側に斜めに下る前橋街道が約五十米先でヤブの中に消える地点、ここを折り返してなお下る作業道が中電歩道である。言うまでもなく草津峠から約五十米の間きれいに整備されていたのは、中電歩道としての役目を負っているからである。道は湯ノ花沢源頭の崖状を半ば崩れた階段で下り、続いて高い笹のトンネル下の水流を下った。湯ノ花沢の源頭部にあたり、二回通ったことがあるが、初回は水流があったので靴を濡らさぬよう注意して通り、二回目は微流のため水を気にせず歩けた。点々と赤杭が打たれており道であることは間違いないが、平常時に水流があるかは分からない。

 数分後に突然寒沢堰の草津峠下送水トンネル上州口に出た。ブルーシートに包んだ資材が置かれ、ここから暗渠となった水路が水平に続いていた。草津峠を向いた赤矢印が取り付けられていた。ここからの歩道は寒沢堰の水路沿い、いや大部分は暗渠であるため水路上を歩くことになった。そのため道幅は十分あって、仮払いもしっかりされており歩きやすかった。時々新しい木の板で塞いであるのを見ると、保守整備も定期的に行われているようだ。蓋の材料は場所により、木板、コンクリート、後半等様々だった。

 

 


木の蓋の他、コンクリ、鋼製等様々、古い缶も落ちてて古くから使われ、手入れもされてる感じ。
スキー遭難看板「あなたは遭難しています」あり。古い矢印だけ看板も木の高い位置に付いてるのが散見され、積雪時のスキーヤー用と見られる。それにしても深雪でこの道自体見えないだろうし、最後の峠への急登もあり意味ない気がするが(辿っていくには少ないし)。
(地図確認1分)初めての水流がまあまあある沢、16取水口。水を取り入れている模様。水路水流も穴から覗き見え、流量も小沢程度にはありそう。
15取水口。大分水を取り入れている。結果、上流から来た水は下流にはかなり減少して漏れ多分が流れている。
ところどころヤブで荒れてる。どうも水路保護のため(点検・修理)の刈払いと見られ、例えば表土で覆われた部分(山から自然に流れてきたのか、それともそれが洗い流された部分で水路が露出しているのか)は放置している雰囲気
(状況確認1分)横手裏ノ沢本流。12・13取水口(二股近いため連続)。水量多く、残雪残る。水はほとんど取られている。危ない丸太橋。読めない古看板もある。また「旧草津街道」と表示し志賀高原方面を指す丁寧な遭難看板がある。

 

区畑近くに出る。

 

⌚ฺ  芳-(25分)-横-(25分)-香-(35分)-草泉 [2024.5.30]

 

[39]関東森林管理局 利根沼田森林管理署 追貝担当区『利根上流森林計画区 第6次国有林野施行実施計画図』、令和二年度、追貝(全11片の内第4片)

 

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この岩壁上の右奥の小沢が円覚に繋がる
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伏流で水のない小沢を適当に上がる
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岩峰の間を六米滝で上がっていく小沢
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左に逃げ大ガレの縁を登り高度を稼ぐ
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数十米登って右の尾根に斜上する
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露岩の多い小沢右岸尾根の芯に達する
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登り過ぎぬよう小沢側に回り込む
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小沢を崖下に見下ろしながら
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緩斜面で正規の旧道に出た
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振り返ると崖の中程に消える旧道が
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円覚は敷地跡が多い穏やかな地形
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社宅があったという大広場
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左上の石垣にあった円覚駅の直下
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ステンレスの小碑がある
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防腐処理の効果で残る当時の柱の残骸
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半年前(2023年5月)にはまだ立っていた
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駅敷地端から見る円覚ノ滝
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円覚駅跡上の吊橋ワイヤー
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不動沢左岸に下がるロープを使わずとも、
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対岸ワイヤーの右に旧道が見える
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電光型にシャクナゲを登る(振り返って)
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旧道周辺はミツバツツジも花盛り
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いったん落ちるように急下する
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植林票の直下付近には、
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索道のトンネルがある([9]より引用)
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滑落が危険な右の旧道、左の捲道が無難
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落葉でよく滑る旧道を注意深く行く
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一〇七五米鞍部で不動沢からの道が合流
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尾根の南側を捲き続ける旧道
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岩を斫った水平道が連続する
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小さな崩壊箇所を慎重に渡る
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土の部分は流土で傾いて歩き難い
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岩に穿った道は崩壊したのか細い所も
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自然林では荒れてやや不鮮明になる
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右下が緩斜面になると川に下ってもよい
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川が近づくと間近に滝が見える
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岩が崩れ荒れたトラバースになる
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かなり危険な崩壊地
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怪しいトラロープに全体重を委ねるしか
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危険箇所を振り返る
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前方に堰堤が見えてきた
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道というよりあるかなしかの踏跡に
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堰堤右岸から河原に降りる
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道のない河原を適当に進む
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流れに合わせて渡り返しつつ遡る
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旧道の物か不明なカラマツ植林の石垣
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広く緩い河原が続く
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気づき難い十林沢出合(振り返って)
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十林沢を過ぎると左岸に旧道が見える
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せっかく復活した左岸道も酷い荒廃
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石垣でかつて道があったことは分かる
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ヒノキ植林で道型ないも多少安定
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とにかく石垣沿いに歩けるところを歩く
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道はないも同然だが地形的は容易に歩ける
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カラマツ植林でまた少し落ち着く
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左岸の道跡が消え右岸に続きが見える
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水中のワイヤーは吊橋の遺物か
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右岸の良道となった
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吊橋ワイヤーがありすぐまた左岸へ
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左岸道は荒れてはいるが何とか歩ける
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作業の目印かピンクテープも
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一番滝・二番滝の脇を通る
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吊橋ワイヤーで右岸へ
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砥沢まであと少し
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町郊外の社宅後の水仙のお出迎え
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この先の吊橋ももちろん落ちている
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ワイヤー下を渡渉して砥沢の本村に入る
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砥沢の中心、山神社に登り着いた
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数年前よりだいぶ荒れていた